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音の性質を聞き分ける~音楽について 19

単音を聞く

 前回は多声部を聞き分ける事について書きました。今回は単音(一つの声部)について考えます。単旋律を聞くことは全く難しいことではありませんが、聞いているようで聞いていないことが色々とあります。音の移り変わりに耳が集中していると、その音の響きにあまり注目できていなかったり、逆に響きに注目すると、音の動きから来る変化に耳が付いきません。耳も目も注目している情報は入ってきても、そうで無い情報は無視してしまう性質を持っています。
 会話を録音してみると、びっくりするぐらい雑音が入っていることに気づくことがあります。会話の内容に集中しているために、その最中は雑音を無視しているという事です。

自分の声のいつも聞いていない部分

 自分の声の、いつもはあまり注目していなかった部分に注目することで、発声のヒントや音楽作りのヒントが見つかることがあります。自分の声の鳴りの部分(声の芯の部分)に注目しているとしたら、声の広がりや響きの部分(声の芯の周りに聞こえてくるもの)を聴こうとしてみる。声の流れをいつもは聴いているとしたら、瞬間瞬間の響きを聴いてみる。などなどいつもと反対の性質の部分を聴いてみて下さい。

 今書いたものも含めて、考えられることをいくつかまとめてみます。
1)音の芯と響きを分けて聴いてみる。発声では音の芯は声門の閉鎖具合がよく分かり、響きは声帯の伸展具合がよく分かります。言葉をはっきりさせたければ音の芯に注目する方が良いし、発声のバランスがおかしいときは響きを聞いた方が良いです。音の周りに聞こえてくるものです。
2)音の移り変わりと瞬間の音。表情に乏しければ移り変わりに注目する方が良く、和音を感じられる音や音程の確認をするときには動きを無視して、今の瞬間を切り取るような聴き方をします。アンサンブルでハーモニーを作るときにはこの聴き方が重要になりますが、これのみに片寄ると、音楽の面白さが無くなり、曲が変わっても同じようにしか聞こえません。音階にはそれだけでそれぞれの音に色があります。主音の安定感や導音の主音に向けての強い指向性などです。瞬間瞬間を味わっていけると自然に色が出てきます。
3)発声に於いて面白い見方ですが、声を無視して、体や声帯の動きにのみ注目してみる。音を聴かないという事ですが、無理をしていたり不自然だったりする部分が見えてきます。

 単旋律の場合ちゃんと聴いているようで、以外と聴いていない要素が多いものです。色々聴き方を変えてみると、行き詰まっていた問題に、思いがけない解決策が見つかることもあります。

絶対音感について

 絶対音感は色々な音の要素の中の音程のみ、それも楽器を使わなくても何の音か分かるだけですので、絶対音感が無いからといって、音楽家としては致命的だと思う必要は全然ありません。耳の良さは圧倒的に他の要素が大切です。
 さらに普段使っているピアノで絶対音感が付いたとすると、平均律で調律されていますので、所々純正律の響きを作ろうとしたときに、本当はきれいな響きになっているはずが、違和感を感じてしまうこともあるようです。

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