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音楽作りに行き詰まった時の2つの視点(その1)~音楽について45

 音取りが出来て、発声の課題が多少あるものの、ある程度音楽になってきて、次の目標や、もっと感動的な演奏にするためにどうすれば良いだろうという問題にぶち当たることはよくあることだと思います。そんなときに2つの違った視点で音楽を考え直すことを提案したいと思います。 音楽を横に見る方法縦に見る方法です。 特別な方法ではありませんが、分けて考えることに意味があります。

 横に見るのはメロディーの移り変わりを感じる方向で、一番よく使われる方法です。しかし、時間的な移り変わり、特に緊張感の移り変わりにのみ注目していきます。まずそれぞれのフレーズのピークの音を見つけます。わかりやすいフレーズもあり、難しいものもあります。こんな時は難しいところは放っておいて、わかりやすいところから始めます。ピークは1つのこともあるし、複数のこともあります。1つの時は各フレーズのはじめの音から徐々に緊張が増し、ピークを迎え今度は最後の音に向けて緊張を緩めていきます。特別なことではありませんが、このことが聞いている人に分かるようにはっきり変化させられているかということは結構重要です。これが明確であれば、お客さんもこの緊張の推移を一緒に体験していけますが、ぼやけていると、どう聞いていったら良いのか分からなくなってしまい、結局耳が離れて行ってしまいます。しかし、これはある程度経験のある人にとっては普通のことで、このくらいはすでに出来ていると思われる人も多いと思います。

 次にピークが複数ある時のことを考えます。そのときは可能な限り、ピークの緊張の度合いに順序をつけます。まれに同じこともあります。この場合は少し難しくなります。始まりは同じですが、最初のピークに達してその後緩んでいきますが、どこかで次のピークに向かって緊張に転換していきます。この転換点を明確に見つけていきます。転換点は前のピークから緩んでいった最後の音であり、すぐに次のピークに向かって緊張を高めていく音になります。転換点が明確になっていくとメロディーの緊張の移り変わりが明確になっていきます。

 緊張の移り変わりに何を感じていくかを詩の内容から見つけていくことも大切ですが、この移り変わりを表現していくことで、歌い手にも気持ちの揺れが生まれ、詩の内容に関しての興味が出てくると思います。音楽を知ってから、その後詩の内容と照らし合わせる方法ですが、より深く詩の内容を感じ取れたり、また、詩は読む人によって解釈が変わることもありますが、作曲家の視点で詩を読むことにもつながっていきます。ちなみに私が新しい曲に取り組む時はほぼ常にこの方法です。

 例えばどの言葉をより大切に作曲家が感じていたかなども分かります。仮に次のような詩の1文があったとします。「孤独な悲しみの夜に」この場合「孤独」「悲しみ」「夜」それぞれに意味があり、どれがより大切などとはいえません。しかし、曲の中では作曲家がより大切に歌ってほしい言葉が分かります。すべて大切だという意見もあるでしょうが、すべて大切に歌ってしまうと、思いは分散されてしまい薄れていきます。悲しみ、夜、を犠牲にしてでも孤独を歌う必要があるかもしれないし、それよりも今の気持ちとしての悲しみを歌うこともあり得ます。さらに、孤独も悲しみもすでに伝わっている状況で、それを何度も何度も味わった「夜」に的が絞られることもあります。これらはどれでも良いわけではなく、作曲家は明確に答えを音の中に書いていますので、それに合わせて歌っていかなければなりません。演奏家のような再現芸術家はあらゆる手法で表現可能ですが、作品の本質を変えてはいけません。逆に本質を変えていなければ、pで書いてある部分をfで演奏することもあり得ます。

 各フレーズの音のピークの話をしていますが、1つのピークに見えるフレーズも細かいいくつかのフレーズに分かれていることもあります。外国語の単語は2つか3つの音節で出来ているものが多いです。その中でアクセントは1つですので、2つか3つの音にすでに1つのピークが生まれています。より細かくフレーズを分解することによってより繊細な表現が出来ていきます。このようにメロディーの時間的な推移を捉えるだけでも表現はより深くなっていきます。次回は縦に考えていきます。

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