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歌曲の作曲をする時に言葉のアクセントと音楽のアクセントをそろえなければならない、ということを聞いて驚いたことを覚えています。今思うと当然のことなのですが、そうではない曲がたくさんあるので、とても不思議に思ったのだと思います。
童謡「赤い靴」1番の歌詞は、
赤い靴 はいてた 女の子
異人さんに つれられて 行っちゃった
ですが、異人さんをひいじいさんと勘違いしていた人も多いと思います。「いじんさん」は”じ”にアクセントがありますが、音楽は最初の”い”にアクセントがあります。そして「ひいじいさん」は最初の”ひ”にアクセントがありますので、子供との関連で、異人さんよりもひいじいさんに結びつくのももっともなことです。
さて、山田耕筰の「赤とんぼ」ですが、
夕焼け小焼けの 赤とんぼ
で始まります。この「赤とんぼ」という言葉は”と”にアクセントがあります。しかし、音楽では”あ”にアクセントがあり。間違いということになります。これに関しては真偽は分かりませんが、後に山田耕筰がアクセントを間違って作曲してしまったと語ったという話と、昔は「赤とんぼ」のアクセントは”あ”だったという話を聞いたことがあります。三善晃さんの「四つの秋の歌」の「林の中」という曲の中で、少女が赤とんぼをハミングで歌うシーンが出てきます。これは間違いなく山田耕筰の赤とんぼを指していると思いますが、”と”にアクセントが来るように作曲されています。
昔のアクセントについては全く分かりませんが、夕焼けと赤とんぼをつなぐ象徴的なものが赤色です。「赤」は”あ”にアクセントがあります。曲のアクセントが同じ位置に来ることによって、トンボよりも赤色が印象に残ります。正しいのか間違っているのかということよりも、これを通していろいろな角度から考えると新しい発見があることもあります。マルかバツかを付けることにより埋もれてしまうこともあるように思います。
「赤とんぼ」では3番の歌詞が、十五でねえやは嫁に行き となっていますが、「嫁」は”め”にアクセントがあります。音楽は”よ”にアクセントがありますので、これも間違っています。有節歌曲(1番、2番のある曲)ではどうしても2番3番の歌詞と1番の歌詞のアクセントが違うこともあり、難しいところです。ただこちらの方が違和感が強いです。
作曲家は詩のイメージと言葉の数でメロディーを作っている訳では無く、一つ一つの単語を凝視して、格闘して、音楽を生み出しています。
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