数学の得意な人は数字を見るとついつい素因数分解してしまう事も多いのではないかと思います。普通の数字なのですが、例えば27は3のかけ算に分解できるのに対し、29は全く分解できず(素数という事です)、そうすると似たような数字が違ったものに見えてくるようになります。
なんだか変な話から始めましたが、分解する必要のないものであっても、分解することによって違った風景が見えてくるということはあるのではないかと思うわけです。このような作業をしないと音楽は分からないという事ではありませんが、分解することによって分からなかったことが分かるようになると良いなと思います。
実は楽曲分析はこの分解する作業なくしてはあり得ません。例えば和声分析をするためにはそれぞれの部分の主要な音を探し出し、最初の和音は主和音、次の小節は5度の属和音と言う風に分解することによって、音楽の大きな方向性や変化を見つけていきます。本当は和音の構成音ではない音の方がもっと大切な音だという事はよくあるのですが、分解する作業の中ではあえてその大切な音を無視していきます。
このように主要な音以外を無視し、拍子やリズム、音程の移り変わり、曲のテンポなどにもこだわらず、とにかく和音の移り変わりのみに集中していくのが和声分析の基本的な方法です。そうすると、同じような和音の繰り返しの部分、新しい和音がどんどん出てきて転調が頻繁に使われる部分、転調したのにその調でとても安定した部分など大きな曲の構造が見えてきます。
和声分析はやや高度な知識と技術が必要で難しいですが、音楽をより深く理解する方法の例として書いてみました。一つの例ではありますが、ある部分に注目し、単純にすることにより、複雑に見える音楽を分かるものに変えていくことが出来ます。さらに、和声分析によりどのような和音の移り変わりは自然で、どのようなものは変な感じになるのか分かるようになります。そうすると先に和音進行を考える。例えば自然に感じるものをたくさん使い、時々違和感のある和音を使う。そしてこの和音進行に合うようにメロディーを作っていくと作曲ができます。ギターを弾きながら作曲したことのある人はこの方法を使った人も多いかと思います。
次回はもっと簡単にメロディーを分解してみます。
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