良い発声=腹式呼吸というイメージのある人も多いと思います。呼吸がすべてではありませんが、とても大切なことには間違いありません。その理由については「発声の呼吸の項目」を参考にして下さい。
腹式呼吸というと何か普段とは違う特別なことをマスターしなければいけないようにも思われますが、そんなことはありません。誰もが日常で腹式呼吸をしています。古い発声の本には普段女性は胸式呼吸、男性は腹式呼吸をしていると書いてあるものもあるようですが、これも間違い です。
このように腹式呼吸に関しては、もっともらしい間違った情報があふれています。
病気でしばらく入院していた人から突然電話がかかってきて、よく知っている人のはずなのに、誰だか分からないくらい、か弱い声になっていて驚いたことが あります。このようなときに腹式呼吸(横隔膜の運動)は極端に弱くなっています。逆に言うと、元気に日常を送っている人の声は、ある程度しっかりと腹式呼 吸が出来ています。
歌の練習では、今までとは全く違う呼吸を見つけるということではなく、自在にコントロールしたり、今までよりも強くしたりということが重要になります。
腹式呼吸(横隔膜の運動)をつかむために、レッスンの中では色々なことをやっていきますが、その一例です。
暑いときに犬がハアハアと呼吸をしますが、このまねをしてみます。初めは少し難しいかもしれませんが、少し続けていくと大 抵出来ます。長く続けたり、速さを変えたりするのはさらに難しくなりますが、これだけでも呼吸筋は鍛えられていきます。ただ長時間練習すると、喉が乾燥し ていきますので、少し注意が必要です。
少し慣れてきたら、同じ呼吸で、音を出してみます。ア、ア、ア・・・・・といった感じです。そうすると、お腹の動きと声に つながりを感じることが出来ます。このつながった感覚がとても重要で、つながっていると、強く使ったり、弱くしたり、また、長くしたり、鋭く瞬間的に使っ たり、自在になっていきます。この自在さこそが腹式呼吸で目標になっていくことです。
レッスンの中で時々質問されることの一つに、肺活量が多くないと歌えないだろうか?とか、そのために長いフレーズが歌えな いのではないだろうか?というものがあります。しかし、もしそうだとすると、標準で男性と女性の肺活量の差がおよそ1000ccほどありますので、男性の 方が圧倒的に良く歌えるはずで、また女性よりも長いフレーズを歌えるはずなのですが、実際はそうではありません。
呼吸筋の強さも同じようなもので、強いことは発声にはプラスの要素ですが、それほど強くなくても、自在にコントロールできれば、良い発声が出来ます。レッスンでは色々な方法を使って、横隔膜が感じられるように練習していきます。
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