ドレミファソラシドの音階は音程を表す記号です。ドより半音2つ分高くなるとレといった感じで、音の高さ以外には違いがないと考えても良さそうですが、ドとレは性格が違います。
音楽は数学的でもありますが、そうではない部分も多くあります。楽譜は縦軸に音の高さ、横軸に時間を取ったグラフのようですが、両方にゆがみがあり、縦軸では同じ幅で上下させても半音の時と全音の時があります。横軸では細かい音符が多いと1小節は長くなり、全音符や2分音符だけだと短くなりますが、同じ長さです。
数学的でもあり、そうではない部分もあるこのゆがみが、音楽をさらに深くしているようにも思います。
ハ長調で考えてみます。ドの音は一番安定しています。次に安定しているのはソの音ですが、少し長くソの音を出し続けるとなんとなく不安定な感じもしてきます。その後ドに変えるとドの音の安定感がより分かるでしょう。シの音は強くドに向かいたい方向性が出ます。導音と呼ばれるゆえんです。ミとラの音はとても表情豊かな音です。この二つを半音下げると途端に短調に変わります。レとファの音は少し安定のドの音から離れようとするような、違う世界を感じさせる音です。
簡単なフレーズをいつもよりゆっくり、音程の持つ性格を感じようと思いながら歌ってみると、なんとなく感じるものがあるのではないでしょうか。ハ長調の曲をドレミで歌ってみると、なおのことわかりやすいと思います。
まずはドの音の安定感とシの音の不安定感を感じてみて下さい。また表情豊かなフレーズはミから始まるものが多いですね。有名なベートーヴェンの第九4楽章のメロディーも調性が違いますが第3音ファ♯(移動ドで読むとミの音)から始まります。例えばこのメロディの前にアウフタクトを加えて、レミ(移動ドでドレ)を加えてみるだけで、この旋律はどっしりしすぎて、これからの展開の可能性を感じさせなくなってしまいます。
レッスンで時々ドレミでゆっくり歌ってもらうことがあるのですが、これを経験してから普通に歌うと、音程の持つ性格がよりはっきり伝わってきて、表情に繊細さが加わることがよくあります。
単純なことですが、音階が持つ原初的な性質を感じられると、音楽はさらに面白くなっていきます。移動ドで歌ってみる意味はここにもあります。移動ド固定ドについてはまた別の機会に。
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