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口の中の共鳴

共鳴の器官としての口

前回共鳴の基本的なことを書きました。その中でおそらく共鳴は主に気管と鼻腔で起こっていると書きましたが、口の中も使えそうなのにあまり共鳴は起こらない、そしてそれが都合が良いということに関して書いていきます。

共鳴の起こる条件

共鳴が起こる重要な要素は堅い素材で出来ていることです。上顎は堅いですので、それにふさわしいのですが、舌が柔らかすぎます。上顎で反射した音は舌で大半が吸収されてしまうでしょう。繰り返しの反射がないので、共鳴はあまり起こらないことになります。

もし口の中が重要な共鳴のための器官だったら

口の中の形は母音によって大きく変化します。もし口の中の共鳴が多かったら、母音が変わる度に響きが変わってしまいます。おそらく音楽はそれに耐えられなかったでしょうから、言葉を音楽に乗せるのは断念され、一つの母音で歌うヴォカリーズが歌のメインの形になっていたでしょう。

母音で音質が変わる

これに反して、母音が変わったときに音質が変化しすぎて困っている人も多いと思います。イの母音で平べったい音になりすぎるとか、ウの母音が浅くなってしまうとか、エの母音が伸びの悪い音になってしまうとか色々あります。母音は主に口の中の形の変化で作られますが、口の中の共鳴が関係ないとすれば何が問題なのだろうかということになります。これは簡単で、口の中の形が変わるときに声帯が影響を受けてしまって、他の母音とは違ったものになってしまっているからです。声帯は口の中に比べるととてもとても奥にあります。本来は口の中の形が変わっても声帯は変わりなく準備することが出来るはずなのですが、意外と難しく、影響を受けてしまいがちになります。

母音で声帯の状態が変わることを利用しての発声

母音で声帯の状態が変わりやすいのはやっかいで、何の苦労も無く同じ声帯の状態を作れればどんなに良いだろうと思いますが、この変化を発声で利用することもあります。ウの母音は声帯が伸びやすいのに比べて、閉鎖がしにくい母音です。喉の開いた状態を発見するには好都合なので、声帯が引き伸ばされた感覚がよく分からない人にとっては良い練習になります。しかし声帯の閉鎖は悪くなり安いので、その時はアの母音に切り替えます。声帯が閉まった感じが分かりやすくなります。ほど良く伸ばしてほどよく閉めたいときにはオの母音が有効です。