以前とても厳しい先生についていて、苦しくなり歌えなくなってしまって、私のところに通うようになる方が時々いらっしゃいます。厳しい指導もすべてが悪という事ではないと思いますが、生徒さんもその重要性を充分に共有でき、さらに厳しさ以上の上達がある時のみ多少の厳しさはあるのかもしれません。しかし、私のところに駆け込んでいらっしゃる方はたいていそうではありません。
練習が上手く進んでいかない時に、おそらくもう手段がなくなってしまうのでしょうが、生徒さんの能力だけではなく、人格の欠点が上達を妨げているなどといわれてしまうこともあるようです。あり得ないことで憤りを感じてしまいます。多少音楽の力があるからといって、人間として優れているわけではありません。どうぞそのようなことで苦しんでいる方は、優れた先生はたくさんいらっしゃいますので、すぐに別の先生を探されることを提案します。
このような経験をされた生徒さんは、頑張らなければという思いと、崩れたバランスで歌うことを強要されすぎていて、自由さのない堅い音で、音域が片寄っているか狭い、音量もあまりないか常に無理をした音になることが多いです。まずは歌う楽しみを取り戻すことが課題ですが、ショックの大きかった生徒さんにはどうしても時間がかかってしまいます。
誰かの価値観に合うようにではなく、自分にとって心地の良い音を出し、自分にとって感動感のある音楽が感じられて初めて、少しずつの変化が始まっていきます。
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