楽譜には演奏に必要な様々な情報が書かれています。しかし、楽譜の書き方は時代によってかなり違いがあります。(ここの作曲家にも特有の書き方はあるのですが、それはまた別の時に・・・)
基本的には古い作品は書き込みが少なく、新しくなるにつれて細かいことまで書かれるようになってきました。例えば、古典派の作品では強弱記号はfかpがほとんどで、それ以外は使われてはいますが、ごくわずかです。(もちろんこれは古典派の音楽は常に強いか弱いかで表現されて、その間の繊細な表現は必要ないと言うことではありません。)バッハになるとほとんど強弱記号は使われず、例えば「フーガの技法」では楽器の指定すら書いてありません。
昔はさらに昔の作品を演奏する機会はほとんど無く、新しく作曲された作品ばかりを演奏していました。現在はコンサートのチラシを見てみても、100年以上昔の作品がほとんどで、現代音楽のコンサートに行くと客席がガラガラだったということはよくあります。モーツァルトの時代には人々はモーツァルトの新作を楽しみに音楽を聴いていたわけです。
そういうわけで、その時代の演奏の常識のようなものがあり、演奏家はそれを知っていたわけですから、楽譜にあまり細かく書き込む必要はなかったのです。
それに加えて、昔は即興的に演奏をする習慣もありました。例えば、装飾音を演奏者の感覚で、自由に入れていました。作曲家がそれを細かく楽譜に書き込んで、演奏の可能性を限定することはしなかったのです。
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