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前打音 音楽について 4

時代で変わる装飾音

 今では、前打音の演奏は実際の拍の前に付けるのが常識になっています。よって前打音よりも実際の音符の方にアクセントがあるように演奏されます。しかしロマン派前期以前の作品の場合、前打音を拍の頭に付け(つまり実際の音符は実際の拍よりおくれて演奏される)、さらに少し長く、また実際の音符よりアクセントがあるように演奏されることもありました。

2種類の前打音

 ここで2つの違った性格の前打音を考える必要があると思います。一つは文字道理の装飾的な前打音、もう一つは和声的な緊張を持つ前打音。ロマン派前期以前が後者になります。

不安定な音

 例えば、主和音(ド、ミ、ソ)の小節の場合、ド、ミ、ソの音を多く使うとその小節は安定します。しかしそれだけでは面白く ないので、その他の音(和声外音)も使いますが、それがアクセントのある拍、その小節の1拍目などに出てくると、不安定さが増します。不安定=悪いイメー ジがありますが、そうではなく、不安定なところは表情が豊かになります。不安定さが持つ緊張感と、安定しているところがもたらす弛緩が音楽を組み立ててい きます。このことはまた別のところで書きたいと思っています。

長い前打音の理由

 前打音に戻りますが、ロマン派以前の前打音の場合はこの和声外音(この場合倚音「いおん」と言います)が使われることが多いので、この表情豊かな音を強調するために、拍の頭に、また長めに演奏されることになるのです。ではこのような音がロマン派以降の作品で出てくるときはど うかというと、前打音ではなく、実際の音符で書かれるわけです。その方が、長めと言うだけでなく、1拍だとか半拍だとか正確な長さが分かりますからね。

 古い作品の場合、前打音をどのくらいの長さで演奏するのかは演奏の際考えるべきところだし、よく議論もされる問題です。

久米音楽工房
久米音楽工房

古い作品の前打音は常に拍頭にあり、長く演奏されるわけではありません。そのような可能性があるということです。それから、古い楽譜の場合は作曲家が書いたそのままではなく、後の時代の作曲家がアレンジを加えて、装飾音を書き足しているケースがあります。それが時代の様式に合っていないこともあり、判断が難しい事もあります。

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