少し前には想像も出来なかったことが起こっています。病気との闘いは長い歴史の中で絶えず繰り返されてきました。人類にとっての大きな試練が、このように繰り返されてしまう理由を考えてしまいます。
様々な芸術活動が自粛を余儀なくされています。特に歌の場合は飛沫感染が問題になりますので、複数で集まっての練習は出来なくなっている方も多いと思います。
どの分野でも同じだと思いますが、練習が出来ないことによる不安がどうしてもつきまといます。確かに練習が出来ないと筋力も衰えていきますし、今まで出来ていたものが失われていくような気がするものです。声楽でも同じことが言えますが、現状で出来ることを考えてみましょう。
練習が出来ない状況でも常に声は使っています。これは実はとても重要なことで、普通に話が出来るだけでも声のトレーニングになります。しかし中にはこの日常の会話も少なくなってしまっていることもあるかもしれません。そう感じる方は是非声を出して文章を読むことをやってみて下さい。練習中の曲の詩を読むでも、好きな本を音読してみるでも何でも良いです。特に詩の朗読を普段あまりやってこなかった人には、新しい発見につながるチャンスになるかもしれません。
歌うことと日常会話での違いを考えてみます。一つは音域です。日常会話では歌で使う音域の低い部分のさらに一部しか使いません。高い音を使うことがほぼないので、何らかの方法で使っていきたいところです。
もう一つは長い音です。歌の場合は一息で10秒くらいは歌うことも多いですし、長いフレーズの場合はもっと長く一息で歌います。会話ではもっと頻繁に(おそらく3~5秒)ブレスしますので、長い音の練習も必要です。
最後に音の大きさです。よっぽどのことでも無い限り日常生活で大声を出すことは少ないと思います。歌では結構の音量で歌うことがありますので、これも日常会話とはかけ離れたことになります。
三つ出しましたが、家にいて練習できないのは最後の大声だけで、それ以外は練習可能です。小さい音で良いですので、時々高い音を出してみる。小さくとも夜中はとても響いてしまうので、迷惑にならない時間に練習してみて下さい。長いフレーズも小さい声で歌っても十分に練習になりますし、最初に書いた音読で、二つか三つの文をブレスせずに読んでみるのも良いかもしれません。ちゃんと声を出さないと練習にならないと思われるかもしれませんが、このような練習だけでも十分に声を維持したり、特に音楽的なことは進歩させていくことが出来ます。是非試してみて下さい。
最後に一番おすすめの練習法です。リップトリルを使います。唇をブルブル震わせながら発音する方法です。始めは難しいですが、だんだん慣れてくると思います。会話くらいの音量ですので、家にいて練習できると思いますし、これで歌を歌っていくと、発声に必要な要素をほぼすべて使っていますので、通常練習が出来るようになったときに違和感なく音楽の世界に入っていけると思います。
とても苦しい状況にいらっしゃる方も多いと思います。音楽家仲間も多くの方が仕事が出来ず苦しんでいらっしゃいます。こんな時に音楽どころではないと思われる方も多いかもしれませんが、こんな時だからこそ音楽に浸る瞬間を作って、このことが次に向かうエネルギーや新しい発想につながっていってくれればと願っています。
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