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コロナの影響で練習できない方へ2~レッスンで40

コロナの中での音楽家

 知り合いの音楽家からも演奏会は中止になり、レッスンも減り、厳しい状況だという声をよく聞きます。できるだけ早く収まってくれることを願うばかりです。今ネットを使ってレッスンできないかを考えているところです。もし何か良いアイデアをお持ちの方がいらっしゃれば、教えていただけると助かります。

いつもと違う練習

 さて前回コロナの影響で練習できない方へで家で出来る練習法を提案させていただきました。しゃべるくらいの音量でも出来る練習がたくさんありますので、通常の練習が出来ずに歌えなくなってしまうかもしれないと不安に思うことなく、普通に歌える時を楽しみに待って、制約のある中での練習を逆に楽しんでいただければと思います。しかし、今回は別の観点から考えてみます。

「耳が良い」こと

 レッスンをしていると、当然のことですが、生徒さんの上達の速いときと遅いときが出てきます。そして、上達の早いときに共通することが一つあります。それは耳の変化です。「耳が良い」というのは音楽家によく使われる褒め言葉で、天性のものだとも思われそうですが、意外とトレーニングで獲得できるものでもあります。そもそも音楽家の耳は酷使され続けています。大きなピアノで練習しているピアニストは、大ホールでも十分に響く音量で狭い練習室の中に10時間以上もこもって練習するし、ヴァイオリニストは左耳のすぐ近くで常に音を聞いているし、オペラ歌手は自分の声だけでなく、デュエットでは顔がくっつくくらいの距離で、大音量の声を聞くし、耳に良い状態ではありません。突発的な難聴になったりとトラブルが絶えません。そういう状態ですので、音楽家は大抵ある意味では耳が悪いのです。それでも音楽家としても耳の良さが必要になります。

いつも聞いていない音を聞いてみる

 喫茶店で友達と会話をしているとき、本来は雑音が多いはずですが、あまり気にせずに会話が成り立ちます。しかしその様子を録音してもう一度聞いてみると、雑音の多さに驚くことになります。無意識に必要な音のみ選択して聞き、それ以外を無視するように耳は使われているからです。音楽を聴くときも、無視してほとんど聞かない音がたくさんあります。ここをトレーニングしていきます。通常は自分が歌っている旋律に注目するところをピアノに注目をする、もしくはその中で左手のベース音にフォーカスしてみます。次はピアノの高い音に注目をしてみます。このように切り替え、をしながらいろいろな角度から音が聞けるようにするのが、音楽家の耳のトレーニングの一つです。

歌いながら別のパートを聞く

 出来たらメロディーを歌いながらピアノのベース音に集中します。そうすると自分のメロディーの動きとベースの動きの関係からさらにもう一つの感覚が表れます。例えばメロディーが上行するときに、ベースは下降するとします。よくある形ですが、そのときに自分がどう感じるかが大切です。このようなトレーニングを積み重ねていくと2声を同時に感じることが容易に出来るようになっていきます。一例ですがこのようなことが音楽家の耳には大切なことです。

2つの声部にすること

 ここでちょっとした実験です。テーブルを右手で軽くたたいていきます。速くもなく遅くもなく、ほどよいテンポで同じ速さでたたき続けて下さい。次に左手でちょうど右手でたたいているテンポの中間に入るように右手と同じテンポでたたいていきます。右手だけだとタン、タン、タン、タンと聞こえるリズムが、両手で、タタタタタタタタと聞こえます。4分音符4つが8分音符8つに聞こえる感じです。難しくはないと思います。結果タタタタタタタタと聞こえますが、同じ速さで右手だけでタタタタタタタタと叩いたのとは違うように聞こえてくるはずです。この場合音程はないですが、2声を聞いていることになります。この2声はタンタンタンタンとンタンタンタンタの2つと言うより、タタタタタタタタと聞こえますが、片手でタタタタタタタタとは違うものです。

多声部を聞くこと

 このように、いつも聞こえてはいるものの注目していない部分に耳を持っていくことによって、新しい音楽を見つけていくことが可能になります。音楽家はこのような耳を絶えずトレーニングしています。大きな声を出したり、長い時間練習することは難しい状況だと思いますが、この機会に今まであまり注目しなかった音に注目して、耳のトレーニングを是非やってみて下さい。この休みの期間が逆に大きく音楽的に進歩させてくれるきっかけになるかもしれません。多声部に関して書きましたが、発声では単音になります。それどもこの多声部を聞く感覚が生きてきます。これはまた次回に。

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