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声楽指導者の頭の中を少し公開2 ~レッスンで35

最初から細かく音程を気にする必要はない

 初めてのレッスンの生徒さんだと、発声の基本的なところの修正を最初にやることが多いのですが、今回は音程のことを書いてみます。音程自体はそれほど急いで修正しなければならないものではありません。例えば音大の入試では多少音程の悪いところがあっても、他が良ければまず間違いなく合格します。つまり最初に審査される課題ではないという事です。それよりも自然な発声や、発声筋の可能性、歌心があるか(音楽解釈と言ったレベルではなく)と言った要素の方が重要です。

それでも音程練習をする理由

 それでも早い時期に音程に触れることがあります。それは主に2つの効果を期待してのことです。1つは声帯筋の伸展が上手く音程と結びつかない時に、声帯をもっと伸ばしてと言ってもどうすれば良いか分かるものではありません。また喉をもっとよく開いてとも言われますが、これも良く分かりません。一番高い音の音程が少し低いので、少し上げられるように頑張ってみましょう。といった形でレッスンを進めていくと、さらに薄い声帯が出来て音程が上がることがあります。この時指導者は音程だけではなく、声帯の状態をしっかり観察します。良い時は良い、まだの時はまだ足りないと正確に伝えていくと、自然に正しい発声に近づいていきます。生徒さんはおそらく音程の問題だと感じるでしょうが、実は発声の修正に音程を利用したというわけです。

もう一つ

 2つめは音の聴き方の問題です。音を聴くという事は重要でもあり、難しいことでもあります。頑張って聴けば良いという事でもありません。おそらく音を聴く時に使われる脳の場所が変わるのだと思いますが、脳科学の研究が進むと解明される分野ではないかと思います。言葉を理解しようとする時と音楽を聴く時とではおそらく脳の働く場所に違いがあるのではないかと思います。全く証明は出来ませんので、違っていたらごめんなさい。

 指導者と生徒さんの間の意思疎通は言葉が大きな割合を占めます。真面目に指示を理解しようとされる生徒さんほど音の聴き方が音楽的ではなくなることもあります。その時に音に集中してもらいたいと思うのですが、歌は単音ですが、音程だけではなく、音量、音の延び、音の色、音の変化、等など様々な要素があり、すべてを同時に把握しようとすればするほど、より考えようとする頭が働き出し、音を聞けなくなってしまうものです。耳がパニックを起こしているような感じです。その時に少し低いので上げてください、といった指示を出しても音程を上げてみましたがこれで合っていますか、といった感じになり、つまり結局音が聞けていないよう状態になってしまいます。

和音を感じる

 そこで和音を感じてもらうようにしてみます。例えばドミソの和音だったとして、今ドを歌っているので、根音の安定感を感じながら和音の中の音になるように歌ってもらうと、徐々に音程が安定してきます。そして音程が安定するのと同時に、考えて理解しようとする頭の使い方が、音を聴こうとする方に変化していきます。音をしっかり聴けるようになると、放っておいても良い発声になり、音楽的な表現になったりするものです。

 実は音程のためだけでも無い音程のレッスンの例でした。

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