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Widmung(献呈)2~シューマン「ミルテ」

詩の変化と音楽の変化

Widmungのテンポ設定と冒頭の記号について前回書きました。

今回はその他の部分を考えてみます。

詩は2連からなりますが、大きな違いはありません。

2連目の最後には自分自身が愛によって昇華される訳ですので、

変化よりも発展していくような感じでしょうか。

しかし音楽は1連と2連で随分と違っています。
2連目の音楽の変化はRuh(やすらぎ)やFrieden(平和)のような穏やかな言葉によるのでしょう。

1連目はDu meine —-(君は私の—-)のような形が目立ちますので、

そこで取り上げてある言葉—-を抜き出してみます。

意味の明確な名詞を中心に取り出してみる

最初から、Seele魂、Herz心、Wonn’幸せ、Schmerz苦しみ、Welt世界、Himmel空、Grab墓

2連目Ruh’やすらぎ、Frieden平和
あなたは私にとってとても大切な存在なんだと、

言葉と連ねてありますが、少し気になる言葉が2つあります。

Schmerz苦しみ、Grab墓、です。

楽譜でも転調ではありませんが、同主短調からの借用和音を使ってあり、

つまりその瞬間短調の響きがします。

これは彼にとって良くないことかというと全く違います。

Schmerzは愛する気持ちが大きすぎて切なくなっていく類いのものでしょうし、

Grabは今まで彼が抱えていた悩みを永遠に葬り去ることができるお墓ですので、

全く幸せな意味しかありません。
ほんの少し短調が使われていますので、

ほんの少しの切なさや、ほんの少し今まで抱えてきた苦しみを入れられれば良いのでしょう。

ちなみにこの曲はシューマン自身がクララと結婚する時に書かれた作品です。

クララの父親はこの結婚に大反対で、結婚に至る前の苦しみはとても大きかったのです。

これらすべてが葬り去られるこの詩を、

シューマンにとって取り上げざるを得なかったのではないかと思います。

伴奏と歌のリズムのズレ

第2連(中間部)は3連符の伴奏なのに、

歌のパートは3連符がありません。

シューベルトだと歌も3連符に合わせることがありますが、シューマンではありません

そういう様式だからという考えはあまり好きではないので、

3連符にすることはできるか考えてみましょう。

3連符の始まった1小節目dieを最後の3連符に合わせることはできますが、

bistとdieの長さが変わってしまいます。

3小節目のderは可能です。

5小節目は1小節目と同じ。

7小節目の最後の音もピアノに合わせることが可能ですが、

なぜ4分音符で書かなかったのかが分かりません。

8小節目の最後はDass du michすべて同じ長さになってしまいますが、

表記は4分音符、8分音符2つと長さが変えられています。

その後の小節では4分音符と8分音符が全く同じになってしまって、

どうしても表記の意図が分からなくなってしまいますので、

おそらく楽譜通り演奏すべきでしょう。

少しややこしかったですね。ごめんなさい。

穏やかな中にある緊張感

一見穏やかな中間部ですが、早くからピアノと歌に微妙なずれがあり、

後半に向けて拡大していきます

決して苦しい音楽ではありませんが、

「あなたによって私が私を超えた存在に変わっていく」時に必要な緊張感を感じます。

とても合わせが難しくなりますが、合う部分合わない部分をはっきり区別して、

この不安定さを味わっていけると良いですね。
最後に転調について少し触れておきます。

最初は変イ長調(Asdur)中間部がホ長調(Edur) つまりフラット4つの調からシャープ4つの調への転調です。

とても遠く感じられるのですが。

変イ長調の主和音ラ♭ドミ♭とホ長調の主和音ミソ♯シはラ♭とソ♯が同じ音で、

ドを半音下げてシに、ミ♭を半音上げてミにするとできますので、

突然色が変わるにもかかわらず、スムーズな転調です。

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