発声練習を頑張っているのに、なかなか声が良くならない…そんな経験は少なくありません。焦れば焦るほど、以前より悪くなった気がして、練習が嫌になってしまうこともあります。ここでは、発声がうまくいかない主な原因と対策を解説します。
1,声帯やその周辺の筋肉に何らかの問題があったり、疲労しすぎている。
声帯の状態は日々変化します。少し腫れていたり乾燥しているだけでも、声の振動は乱れます。症状としては以下のようなものがあります。
- 声の出始めがスムーズでない
- 小さな声が途切れる
- 滑らかな音程変化が難しい
また、声帯自体に問題がなくても、周囲の筋肉が固くなると声帯のコントロールが難しくなり、声が出しづらく感じます。
2,「良くない」と思い込みすぎている
実際には声が良くなっているのに、自分では変化に気づけないことがあります。これは、理想の声に対する思い込みが偏っていることが原因です。
- 重い声が好き
- 軽い声が好き
- 子供のような声が好き
など、人によって好みは異なります。
3,工夫をする事で逆に不自然な発声になってしまう。
発声練習をするとき、今の声より少しでも良い声にするように、もっと喉を開けようとか、お腹をもっと使うようにしようとか色々と工夫をしながら練習すると思います。これ自体は決して悪くないのですが、このことが原因でスランプになってしまう事もあります。今回はこのことについて書いてみます。
例えばもっとお腹を使った声を出そうとするとします。一生懸命お腹に力を入れていてもなかなか良い効果が出ないとなると、もっと力を入れなければと頑張る事になります。そのうちお腹の硬直が喉周辺の筋肉にも伝播し堅くなっていきます。そうすると声帯をコントロールする筋肉がスムーズに動かなくってしまって、音程と喉のバランスが取れなくなってしまいます。こうなると何をやっても上手くいきません。このままレッスンに行くと力の入れすぎだと言われてしまいます。今までどうやってしっかりお腹に力を入れようかと頑張っていたのに、力を入れないようにと指示されてしまいます。少なからず混乱してしまいます。そしてレッスンが順調に進んだら、力を入れないようにすることで、喉周辺の筋肉の硬直が少しほぐれ、自然な発声が戻ってきます。確かにこの方が良かったと感じるかもしれませんが、お腹をしっかり使ってもっと良い声にしようとした努力はどこかに消えていってしまいます。
上に書いた例やそれに近いことは誰でも一度は経験したことがあるのではないでしょうか?少し解説していきます。まずはお腹をもっと使おうとすることから始まります。歌に限らず声を使うときにはお腹から声を出すというのはおそらく子供の頃から幾度となく聞いてきたことだと思います。疑うことの無い真理に感じられるものです。本来ならお腹に力を入れることで声帯が変化しますので、お腹を使う練習はこの関連性をしっかりたどることがとても大切なのですが、まだ発声になれていない状態では分かるはずも無く、上手く行かないのは力が足りないからだと思ってしまいます。そこでもっと力を入れようとするのですが、これが発声のバランスを崩していく原因になっていきます。せっかく頑張って練習しているのに、残念な結果になってしまいます。ちなみに椅子に座っている状態から立ち上がろうとするとお腹に力が入ります。このくらいの力で十分ですので、上手くいかないとしたら、もっと力を入れるのでは無く、お腹の力が声帯の動きに結びつくことのみに集中するのが一番良いです。脱力は一時的に筋肉のこわばりを取ってくれますが、お腹と声が結びつかないことに変わりはありませんので、課題は解決しません。
まだ発声に慣れていない段階では、以下の方法がおすすめです。
- 一番うまくいく発声を選ぶ
- 音量・音色・スピードを揃えて淡々と繰り返す
- 慣れてきたら、お腹や喉の動き、響きのポイントを観察しながら繰り返す
「進歩しないのでは?」と思うかもしれませんが、発声には声帯・筋肉・呼吸などすべてが連動して初めて声になります。淡々とした反復練習こそ、確実に基礎を作る近道です。慣れてきたら、その後に工夫を加えても遅くありません。
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