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発声練習がうまく進まないとき~練習の目標36

発声を頑張っているのにうまくならない

 発声練習を頑張っているのに、なかなか声が良くならないという経験は少なからず皆さんあるのではないでしょうか?焦れば焦るほど良くならないばかりか、以前より悪くなった気がして、練習がいやになってしまう事もあるかもしれません。色々な要因が考えられますが、少し挙げてみます。

1,声帯やその周辺の筋肉に何らかの問題があったり、疲労しすぎている。

声帯の状態は日々変わります。明らかなトラブルでは無くても少し腫れていたり、乾燥していたりすると、振動が悪くなります。症状としては声の始まりがいるもより悪かったり、小さな声が途切れてしまったり、なめらかな音程変化が出来なかったりします。また声帯には問題が無くても、声帯周辺の筋肉が固くなっていると声帯のコントロールが上手くいきませんので、声が出しづらいと感じられます。

2,本当は良くなっているのに良くないと思い込んでしまう。

これは意外と多い現象です、良い声に対する思い込みが偏っていることも一因です。重い声が好きだったり、逆に軽い声が好きだったり、子供のような声が好きだったり等あります。声の質に対する目標は持たないのが一番ですが、なかなか難しいようです。このことについてはまた別の機会に書いてみます。

3,工夫をする事で逆に不自然な発声になってしまう。

発声練習をするとき、今の声より少しでも良い声にするように、もっと喉を開けようとか、お腹をもっと使うようにしようとか色々と工夫をしながら練習すると思います。これ自体は決して悪くないのですが、このことが原因でスランプになってしまう事もあります。今回はこのことについて書いてみます。

脱力をすすめられる

例えばもっとお腹を使った声を出そうとするとします。一生懸命お腹に力を入れていてもなかなか良い効果が出ないとなると、もっと力を入れなければと頑張る事になります。そのうちお腹の硬直が喉周辺の筋肉にも伝播し堅くなっていきます。そうすると声帯をコントロールする筋肉がスムーズに動かなくってしまって、音程と喉のバランスが取れなくなってしまいます。こうなると何をやっても上手くいきません。このままレッスンに行くと力の入れすぎだと言われてしまいます。今までどうやってしっかりお腹に力を入れようかと頑張っていたのに、力を入れないようにと指示されてしまいます。少なからず混乱してしまいます。そしてレッスンが順調に進んだら、力を入れないようにすることで、喉周辺の筋肉の硬直が少しほぐれ、自然な発声が戻ってきます。確かにこの方が良かったと感じるかもしれませんが、お腹をしっかり使ってもっと良い声にしようとした努力はどこかに消えていってしまいます。

解説

上に書いた例やそれに近いことは誰でも一度は経験したことがあるのではないでしょうか?少し解説していきます。まずはお腹をもっと使おうとすることから始まります。歌に限らず声を使うときにはお腹から声を出すというのはおそらく子供の頃から幾度となく聞いてきたことだと思います。疑うことの無い真理に感じられるものです。本来ならお腹に力を入れることで声帯が変化しますので、お腹を使う練習はこの関連性をしっかりたどることがとても大切なのですが、まだ発声になれていない状態では分かるはずも無く、上手く行かないのは力が足りないからだと思ってしまいます。そこでもっと力を入れようとするのですが、これが発声のバランスを崩していく原因になっていきます。せっかく頑張って練習しているのに、残念な結果になってしまいます。ちなみに椅子に座っている状態から立ち上がろうとするとお腹に力が入ります。このくらいの力で十分ですので、上手くいかないとしたら、もっと力を入れるのでは無く、お腹の力が声帯の動きに結びつくことのみに集中するのが一番良いです。脱力は一時的に筋肉のこわばりを取ってくれますが、お腹と声が結びつかないことに変わりはありませんので、課題は解決しません。

工夫をしない練習

しかしながら、まだ発声についてよく分からないときにこれらのことを踏まえて練習が出来るはずもありません。そこでおすすめの練習の一つですが、一番上手くいく練習を何度も同じように繰り返すことです。毎回同じ音量で、同じ音色で、同じスピードで繰り返していきます。何も考えずに同じ繰り返しが出来るまで淡々と繰り返していきます。慣れてきたら、その時お腹はどう動いているか、音色はどのように変化しているか、喉周辺の力はどのように推移しているか、響きのポイントはどのように感じられるかなどを見ながら、さらに淡々と繰り返していきます。これでは進歩しないのではないかと思われるかもしれませんが、そうでもありません。発声には声帯を引き伸ばすこと、正しく声帯が閉鎖されることお腹やその他の筋肉がそれらをサポートすることが必要になりますが、これらすべてが働かないとたった1音でも声になりません。お腹を使っていない声とか、喉が開いていない声は存在しません。十分なのかまだ十分ではないのかの話になります。そして十分ではなかったとしても、使い続けているとだんだんしっかりしてくるものです。よく分からない間は出来る練習を繰り返すことが練習時間の8割くらいあると良いように思います。残りは好きなように工夫をしてみてください。上手くいくかもしれないし、いかないかもしれない。それでも必要な練習は出来ていますので、確実に進んでいきます。