リップトリルとか、リップロールとか呼ばれている練習についての話です。大流行の練習法ですが、他の練習に比べ特殊なことがあります。それは、声楽の練習だけでは無く、ポップス等他のジャンルの歌を歌っている人、さらには役者やアナウンサーなど声を使うあらゆるジャンルの人にも使われている練習法だと言うことです。これはこの練習がとても有効な練習法だと言うことの証拠でもあります。
ジャンルによる違いを強調して練習する例もありますが、これだけに頼るのはあまり賛成できません。例えば、オペラとミュージカルは違う発声をするとか、合唱と声楽は違うからその違いをしっかり把握して練習すべきだといった考え方です。極端な例ですが、お坊さんのお経とオペラ歌手の声との違いを見つけることは容易です。しかし共通点となると意外と難しい。そのため違いに注目した練習がどうしても多くなりがちなのですが、本当はどんな声にも共通する部分こそが声にとって最も大切なことなのです。いろいろなジャンルの人に通用する練習と言うことは、どんな声にも共通する部分の練習なので、声の本質的な部分の練習と言えるのです。
リップトリル(リップロール)は唇をブルブル震わせる声の出し方ですが、全く経験の無い方には何のことか分からないと思います。YouTube等で検索するとたくさんの方が動画を上げてくださっていますので、よく分からない方はそれを参照してください。
発声では、横隔膜を中心とした呼吸や姿勢や響きや様々なことが課題になっていきますが、実際は声帯を引き延ばす張力と声帯の閉鎖の強さのバランスで、すべての音程、強さ、音色を作ります。本質的にはこの2つの力だけです。ただこの2つが柔軟性を持ち、力強く、自在に使えるように横隔膜等の協力が不可欠だと言うことに過ぎないのです。そしてリップトリルの練習にはこの2つの力がしっかり使われる、もしくはこの2つがしっかり使えないとリップトリルは出来ないので、リップトリルをやるだけで、バランスの良い練習が出来ます。
では実際の練習方法について書いてみます。次の項目に中止ながら練習してみてください。
- まずは出来ることです。唇が十分に柔らかくないと出来ません。しばらく練習すると出来るようになりますので、最初は少しでかまいませんので、頑張ってみてください。
- リップトリルは声帯が振動する方法と振動しない方法の2つが考えられますが、必ず声帯が振動する方法で練習してください。声帯が振動しないと音程が変えられませんので、それが出来るような音を使います。
- 少し出来るようになったら、長く続けられるようにしていきます。目標は20秒です。少しづつ頑張っていきましょう。この場合音程は何でも良いので、自分で出しやすい音程で行ってください。
- 次に音程を変えられるようにして、最低音から最高音まで出せるように練習します。こうなると曲をリップトリルで歌えるようになりますので、今取り組んでいる曲でも、過去に歌ったことのある曲でも何でも良いですので、全曲歌ってみてください。意外と難しく、息が続かなくなったり、高い音が苦しくなったりするものです。
- 決して簡単ではないのですが、出来たか出来ていないかが分かりやすく、さらに間違った練習になることもあまりないので、出来るようになれば良いなと思って繰り返すことが大切です。
- 曲を通して歌えるようになればとても大きく進んだことになりますが、さらにもっと声帯の張力のある状態にしたいと思います。鎖骨の間を大きく左右に開いたように感じてリップトリルをするとより深い色に変わります。こうなると横隔膜がさらにしっかり動かないとこの状態をキープできなくなりますが、これがとても良い練習になります。さらに難しくなりますが、ここまで練習をしていきます。
間違った練習になることが少ないことと、出来たかどうかがわかりやすいのもこの練習の特徴です。慣れないと難しいですが、是非チャレンジしてみてください。
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