音の高さの読み方に色々な種類があることが音楽をややこしくしている一つの理由だと思います。ドレミファソラシドだけではなく、ドイツ語だとCDEFGAH(シの音はBではなくHです。ちなみにシ♭がBです)、さらにシャープはisフラットはesを付けて、ソのシャープはGisソのフラットはGesのように表します。英語もアルファベットを使いますが、isやesを付けたりせず、ソのシャープはG♯、ソのフラットはG♭です。さらに日本語はハニホヘトイロです。
同じもので読み方が違うだけなのですが、性格の違いから使い分けられています。歌う時は子音と母音の一つずつの組み合わせだけでできているドレミが圧倒的に便利です。正確に音の高さを伝える時には♯♭をまとめて表現できるドイツ語がよく使われます。ポップスのコードネームは英語を使います。調性をいう時はドイツ語がよく使われますが、日本ではハニホヘトが一般的です。ト長調のように。ドイツ語ではGdur、ソ長調でも良いのでしょうが、残念ながら使われません。
どうも縦割り行政のようなややこしさを感じてしまいますが、現状がこうなので慣れるしかないですね。
これだけでも大変なのですが、さらに固定ドと移動ドの読み方があります。固定ドは一般的なドレミを使った音の読み方で説明はいらないと思います。移動ドはもっと特殊です。調が変わった時にも主音を長調はド、短調はラに読み替えてすべての音の読み方をスライドさせる読み方です。ソから始まる長調ト長調の場合ソをド、シをミ、レをソに読み替えます。通常のドレミも苦労する人にとってはあり得ないほど難しいことだと思います。とても大変なのですが、良いところもあります。
調性というのは簡単に言うと、その調の主音を感じながら音楽が進んでいく形です。その主音が常に長調の場合ドと発音されるわけですから、ドと発音される音は常に主音の安定感があり、シと発音される音は一番ドへの指向性の強い音になって聞こえます。つまり音の性格が表れるわけです。
この難しい移動ドが、ある時期日本の音楽の教育で積極的に取り上げられていました。音楽教育に熱心な学校ほど苦労して移動ドを教えていたようです。しかし、読み替えが大変だし、転調のたびにドの位置は動きますので、転調の多い曲は転調をすべて把握できないと音が読めなくなってしまいます。結局そんなことできるわけもなく、カタカナでドレミを付けてカタカナを読む練習になってしまったり、転調しても元の調のままで読み替えをしなかったり、こうなると移動ドであることがかえって邪魔な気がしますが、現状はそうだったようです。
音取りのために移動ドを使うのは現実的ではありません。ほとんど転調のない曲だと使えますが、それ以外は難しすぎます。移動ドを無理矢理教えられた人たちも固定ドに慣れていった方が現実的な気がします。プロの音楽家で移動ドを中心に音を考えている人はとても珍しいです。見事に移動ドで瞬時に音楽構造を把握されている音楽家も知っていますが、凄いです。
音取りが出来た後で、音程の性質を知るためや、和声的な音程を作る時には移動ドは有効になりますので、その部分だけ移動ドに読み替えをするのもありのような気がします。
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