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古いものが良い?~音楽について49

 最近の演奏家よりも少し古い演奏家の方が好きだと思う方もあるように思います。これには理由があります。

 古いものは時代のフィルターにかけられて、良くない演奏はふるい落とされ、それをかいくぐってきたものしか聴くことが出来ないからです。例えばランダムに最新録音のCD10枚と50年前に録音されたCD10枚を聞き比べたとしたら、古い方が質の良いものが多い可能性が高いでしょう。そのため、手当たり次第いろいろな演奏を比べた時に古い録音に良い演奏が多く聴かれるようだと、次に買うCDも古い録音を手に取ってしまいがちです。新しい録音の方が録音技術は遙かに良いのですが、そのうち慣れていきますので、どうしても古いものを手に取るという循環は出来やすくなります。演奏の質より、はっきり音が聞き取れた方が良いとなると、当然新しい録音ばかり聴くことになります。

 これとは逆に音楽解釈を考えると、より新しい方が良いこともあります。演奏解釈は演奏家だけが取り組んでいるのではなく、時代や楽譜の研究が進んでいくと、変わってきます。古楽の演奏もその一例です。古楽の演奏はどの曲も現代の演奏に比べて少し速いものが多いです。速い演奏になじめず、古い録音を好んで聴くということもあるかもしれませんが、速くなるにはその理由があります。一番大きな理由は楽器です。昔の楽器がどうだったかの研究が進みおそらくこうだったと思われる楽器が作られるようになってきました。現代の楽器は十分に音を伸ばすことが出来ますが、昔の楽器はそれが難しかった。ピアノとチェンバロを比較しても分かると思います。それだけではなく、バイオリン等の弦楽器も現代の楽器は十分に長い音の演奏が出来ますが、古楽器の場合はすぐに音が途切れていました。そのため曲のテンポが速くなければならなかったのです。もちろんオルガンのように長く音を伸ばせる楽器もありましたが、切れてしまうものの方に合わせないとバランスが悪くなってしまいます。

 曲のテンポが速くなるとフレーズが短くなり、より動きなある演奏になっていきます。踊るような古楽の指揮者のイメージのある方も多いかと思いますが、それも古楽器からくるものです。

 そうすると、古楽器で演奏する場合はある程度速いテンポで演奏するしかないのですが、現代の楽器で演奏する場合はいろいろな選択肢が出てきます。それでもし現代の楽器の特性を生かして、少し遅めのテンポ設定にしたとしても、古楽の演奏も知って遅くするのと、知らずに遅くしたものでは全く違う演奏になります。新しい録音の良さはここにも現れます。

 古い録音を好みやすい理由と、良い演奏を見つける大変さはありますが、新しい演奏の大切さも分かっていただけたと思います。私自身は古い演奏も新しいものも聴きます。ただ演奏解釈を考える時には極力楽譜から考えます。楽譜を見ないと先入観で音楽をゆがめてしまい易いからです。しかしそれでも迷う時にはやはり新しい録音で、さらによく勉強している演奏家の演奏を参考にします。これは丹念に聞き分けていかないと、間違ってしまうことになります。指導者はそれではだめですので。