声区は一般的に頭声、中声、胸声区の3つに分類されます。声帯が厚いと胸声、少し薄くなってくると中声、さらに薄くなると頭声となります。3つの分類はあくまで一般的にはという話で、極端に高い音でもう一度チェンジを感じる人は4つになるし、さらに中声の高い音と低い音では違いを感じる場合は5声区にもなります。さらに全部1つに感じる人には1声区、つまり声区はないということにもなります。これらはすべて個人的な感覚ですので、何でも良いです。何の苦労もなく高い音も低い音もむらなく使えて、なめらかにつなげられるようであれば、声区の考え方は必要ありません。逆に低い音がとても小さくなってしまうとか、高い音がなかなか出せない人にとっては、声区の考え方はとても重要になってきます。
このように声区で声帯の厚さが変化していても、全体が薄い声の人もいれば、全体が比較的厚い声帯の人もいます。前者はレジェーロ、後者はドラマティコと分類されていますが、レジェーロの人が少し厚めの声帯でも歌えるようになれば、リリコの役柄も歌えるし、徐々に演じられる役が増えてきます。しかし、レジェーロの人が急いでリリコやましてやドラマティコに挑戦しようとすると、喉が無理をして、声帯を大きく損傷してしまうこともあり、またドラマティコだからといって、軽い音を全く練習しないのも、喉によくありません。声区には色々な練習のヒントがあります。
音域が狭い人にとって声区の練習は欠かせません。例えば頭声区がほとんど出ないかもしくはとても苦労する場合、頭声区を開発していく必要があります。中声区と胸声区だけしか使えないとすれば、当然音域は狭くなりますし、この場合胸声区もあまりきれいに使えないことが多く、中声区のみになってしまいます。すると1オクターブあるかないかの音域ですので、歌える曲がかなり限定されてしまいます。しかし、この人が頭声区と胸声区を開発できたとすると一気に1オクターブ以上音域が広がることになりますので、歌の可能性はどんどん広がっていくことになります。
一番厚くした声帯でも歌えるし、一番薄くした声帯でも歌えるようにするというだけの話なので、論理的には簡単だし、誰でもできることなのですが、実際は結構大変です。今まであまり使わなかった筋肉の動きを会得していくのですから、当然難しさはありますが、出来る人と出来ない人がいるといったことではなく、誰もが出来ることだけれども、とにかくまだ慣れていないだけだということを自覚することが必要です。目標はすべての声区が同じくらい自由に歌えるということです。
練習にあたっての注意点をいくつか書いておきます。
1,最終目標はすべての声区で苦手なところがないようにすることです。
2,苦手な声区の練習の最初は決してきれいな音にはなりません。しかし、使っていかないと育ちませんので、まずは使うことが大事です。
3,しかし、苦手な声区できれいに音が出ないときには、とても声帯に負荷をかける歌い方をしていますので、最初から長時間練習してはいけません。
4,練習には順序があります。まずは中声区、その後頭声区、しかしここでも中声区の練習を中心として、頭声区を加えるようにします。頭声区のみの練習になってはいけません。最後に胸声区。この時も常に中声区の確認、次に高声区の確認をして、胸声区の練習に入ります。
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