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音程の練習~音楽について70

音程に関してはなかなか自身をもてない

 音程に関してとても自信があるという人は少ないのではないでしょうか?レッスンでも音程がよく分からないとか、自信がないと打ち明けてくださることがあります。その時は、諦めずによく音を聞き続けていけば、誰でも音程は聞き取れるようになりますと答えています。今回は音程についての話です。

ソルフェージュについて

 音程の勉強といえばソルフェージュを思い浮かべる人も多いのではないでしょうか?音大の入試には大抵ソルフェージュの試験がありますし、入学後もソルフェージュの授業があります。様々なソルフェージュの勉強スタイルがありますが、基本的には新曲視唱と聴音です。新曲視唱はその場で渡された楽譜を歌うことで音にするもので、聴音は逆に演奏されたものを楽譜に書き取るものです。つまり、楽譜を音にする、そして音を楽譜にするためのものです。

 歌っていて音程に自信がないというのはこのことではなく、おそらく楽譜の音はもう取れているものの、きれいにハモっていないといったような細かな音程のことを指すのだと思います。ですので、この二つは関連はあるものの別のものだと考えた方が良いです。ソルフェージュの能力はとても高く、すぐに楽譜を音に出来るし、聞こえてきた音楽を楽譜にすることが出来るのに、実際に歌ってみるとあまり良い音程で歌えないこともありますし、全く楽譜が読めないにもかかわらず、とても良い音程で歌えることもあり得ます。音大を出た人はソルフェージュをやっていたから、とても音程が良いはずだというのは残念ながら当てはまりません。別物です。つまりソルフェージュ能力が弱いので、音程が上手く取れないということでもないということです。

専門的な教育

 合唱の練習中や個人レッスンの時に音程が少し低いとか高いとか指示を受けることは頻繁にあります。音大生もこれらの練習をするのはほとんど個人レッスンやオペラや合唱の実習、個人での練習の時です。ソルフェージュの時間に細かな音程の練習をすることはあまりありません。ソルフェージュは高度になってくると複雑なリズムや、調性が不安定な曲の練習になっていきますので、音大を出ているからといって、繊細な音程練習が出来ているわけではありません。逆に音大を出ていないから音程のことがよく分からないということではないということです。

音程にトラブルがあるときの2つのケース

 音程が良くないとき次の2つのケースが考えられます。1つは発声的に問題があって、音が不安定になり音程が定まらないケース。もう1つは発声はある程度安定しているのに、正しい音程で歌えないし、指摘されてもよく分からないケースです。最初のケースでは音程練習は後回しにした方が良いです。まずは発声練習が先です。例えば声帯の張力が足りずに音程が届かない場合、低いと言われてしまいます。これ自体は正しいのですが、音程を上げようとしてもなかなか上手くいかないものだし、一時的に音程を上げられても、すぐに戻ってしまう。または音質が良くないまま歌ってしまうことになります。発声練習が先です。

音程にのみ集中してみる

 2つめの発声的にはそれほど無理をしていないのに音程が良くないケースでは、専門的なトレーニングが出来ていないからとか、自分は細かい音程は分からない人なんだと思いがちですが、そうでもありません。単純に音程に集中して音を聞く機会が少なかったに過ぎません。本当に数週間音程に特化して音を聞き続けると、だんだんと分かっていきます。普通に音を聞くのではなく、音程にのみ集中して聞いていきます。練習するときには音程以外の課題もあるでしょうが、音程に集中できるときにはよく分からなくても音程を聞こうとします。CDを聞くときもしばらくは音程のみに集中します。テレビで音楽が流れてきたときにも音程に集中します。これらを実践することはなかなか難しいですが、しばらく続けていくとなんだか分からなかった音程がだんだん分かるようになっていきます。今まであまり音程を気にしていなかっただけなのです。ただ、音程に集中しようとしても、音色や表情にすぐに耳が持って行かれ、音程にのみ集中するのも難しいものです。ある程度の時間音程のみに集中できるようになったら、もう既にある程度音程に関しては分かるようになっています。

細かな音を聞き分ける能力

 集中していくだけで細かい音程が分かるほど人間の耳は高い能力を持っています。言語を聞き取る能力はとても優れていると思うのですが、誰もが普通のことだと感じています。PとTの違いは唇で息を止めて発音するか、舌先で止めるかの違いですが、この細かな違いを確実に聞き分けられます。特殊な能力とは誰も思わないですが、すごい能力だと思います。音程も必要があり、聞き続けていくとPとTの違いが分かるように聞き取れるようになります。諦めずに聞き続けることです。