合唱団で歌っている方も多くレッスンにいらっしゃっています。精力的に合唱団で活動をしつつ、さらに声にも音楽にも磨きをかけようと頑張っていらっしゃっていて、とても素敵なことだと思っています。
皆さん様々な思いを持ってレッスンにいらっしゃいます。最近では指揮者以外に専属のヴォイストレーナーが付いて発声を強化しているところも多いようです。素晴らしいことですが少し問題もあります。大勢でいっしょに発声をしますので、難しい面もあります。例えば、どの高さの音で始めてどの音域まで練習するのかが一人一人に合った練習に出来ません。通常声の高い人はシ♭位から、低い人はファ位からはじめます。4度くらいの差ですが、始まりの音はとても重要です。さらに最高音を高い声だとハイC(ド)までは出したいところですが、低い人にはG(ソ)でも大変です。音域だけではなく声は個人差が大きく、声帯はとても強いのに柔軟性に欠ける場合や、逆にとてもしなやかなのだけれど力がない場合など、それぞれに合わせて練習の目標は変わってきます。結局指導者は中間を探すことになり、またどうしてもメニューが多くなってしまうので、自分にとってどの練習が今一番大切なのかはわかりにくくなってしまいます。
もう一つ大きな問題があります。本来なら発声は声の可能性を広げ、様々な表現が出来るように練習していくものなのですが、逆に一つのポジションのみの発声を全員で練習して、それがこの合唱団の色ですといった具合に練習を進めるケースもあります。もちろん長所もあります。同じポジションですべて歌いますので、音色がそろうし、音程も合わせやすくなります。しかし、どの曲も同じ色になってしまいますので、演奏は面白くありませんし、目標は音楽を作ることではなく、同じ色にすることになってどうにも退屈な練習になっていきます。また、本来の発声トレーニングとは違いますので、長く練習していっても、あまり声は進化しません。
良い声を作るには発声の様々な器官が有機的につながり、さらにそれぞれがある程度の強さと柔軟性を持つことが大切になります。長く歌に関わっていても色々な問題を抱えていることも多いと思います。自分自身の声を知ること、そして何かしらの問題があればそれを解決できる練習を見つけることが重要です。これらの練習が進んでいくと、喉のこと、呼吸のこと、声のポジションのこと、姿勢のことなど発声に関するあらゆる事を考えずに歌うことが出来ます。発声を考えずにすむことが発声の目標なのかもしれません。
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