声の目標に関してはこちらにまとめた記事があります。
美しい音は高い響きが入った音だと思っている方が多いのではないかと思います。
実際にオシロスコープを使って実験してみると、
汚い音ほどたくさんの高い音が混ざっていることが分かりました。
そして逆に中心の音と倍音のみから出来ている音はキレイなのですが、
表現に乏しい音でもあります。
美しい音はほど良く雑音が混ざった音だとも言えるかもしれません。
さらに音の美しさを数字で測ることは出来ないということの証明かもしれません。
レッスンではこのようなことも踏まえ、
常識にとらわれず、
理想の音を求めていきます。
音はオシロスコープ等を使って波形で表すことが出来ます。
本来はとても高価な機材が必要になるのですが、
携帯電話のアプリで簡易なオシロスコープがありましたので、使ってみました。
音が発せられると空気が動きます。
その時、同じ音量で同じ高さの音を出し続けると、
規則的な空気の揺れが起こります。
ちょうどバネの伸び縮みのような揺れです。
時間の経過での空気の揺れの変化をグラフの形に表したのが、
オシロスコープで表される波形です。
次に挙げるのは実際に私が声を出して作られた波形の一つです。

上のグラフが波形で波の山も谷もこのグラフでは3つ見えます。
高い音になるとこの間隔がもっと詰まって、
山や谷が4つや5つに変わっていきます。
そして山と谷の上下の幅が音の大きさを表します。
狭いと小さな音、広いと大きな音となります。
下のグラフは実際にでている音の周波数(Hz)を表します。
一番長いのが実際に出そうとしている音の周波数ですが、
その他の周波数も混ざっているのが分かります。
1000Hzまでを拡大できるともっとよく分かるのですが、
おそらく2番目に長いところが1オクターブ高い倍音(最初の倍音)だと思います。
実はこれはファルセットを出したもので、
とてもきれいな正弦波が見られます。
音叉を叩いた時のような波形です。
余分な音も混ざらず、音程も分かりやすい、
シンプルな音です。
次は実声です。

先ほどのきれいな正弦波と違って規則性はあるものの波形が変わりました。
本来はこちらの方が音が低いので、
波形が先ほどよりも横に広がるはずですが、
おそらくアプリで見やすいように山が3つの形に修正してあるようです。
同じ条件でしたら、もう少し横に広がった形で、
さらにファルセットよりも少し大きいはずですので、
上下の幅はもっと広がるところです。
波形以外に下のグラフででているようにいろいろな周波数の音が混ざっています。
元々の音に対してそれ以外の周波数の音がとても多くなっています。
倍音も多く混ざっているはずですが、
そうでは無い音も混ざっています。
これも1000Hzまでのグラフを拡大してみることが出来れば、
もっとよく分かるのかもしれませんが、
残念ながらそこまでの性能は無いようです。
どちらにしろ倍音以外の音も多く混ざっているはずです。

いろいろな楽器の音はどうなるかというと、
2つめの波形のようにきれいな正弦波では無い音になります。
そしてこの独特な波形がそれぞれの楽器で違うのですが、
それがその楽器特有の音色を作っていきます。
基音と倍音だけではなく、
雑音と言えると思いますが、
他の周波数の音も混ざって音楽的な音色が生まれています。
決してきれいな正弦波が一番きれいな音というわけではないのです。
最後にわざと汚い声を出してみました。

波形の連続性も少し危うくなっています。
さらに面白いことに下のグラフの周波数分布を見てみると、
さまざまな周波数の音が鳴っていることが分かります。
打楽器などはこのようにいろいろな周波数の音が出るために音程がはっきりしない、
そのためどの調になっても調律することなく違和感なく演奏出来るので、
便利になっています。
それから1,000Hzを超える高い音も汚い音を出そうとした時に多くなっています。
倍音が多い方が良い音だといった考え方にはどうも疑わしいものがあるように思います。

ここで倍音の説明を入れておきます。
音を出した時にその音よりも高い音が混ざって聞こえてきます。
これが倍音です。
例えばある長さの弦をはじいて音を出した時にまずはその弦の長さの音が聞こえますが、
その弦の半分の長さの音もうっすら聞こえます。
さらに3分の1の長さの音、4分の1の長さの音といった具合にいろいろな音が混ざります。
これを倍音といいます。
100Hzを基音とすると、第1倍音は200Hz、第2倍音は300Hzです。
ドの音を出すと、まずその1オクターブ上のド、
次にその完全5度上のソ、それより完全4度上のド、
長3度上のミ、短3度上のソ、といった具合にいろいろな音が混ざってなります。
これが倍音です。

今回の実験をまとめてみました。
- 今回出した音ではファルセットが一番余分な音のない、
基音と倍音だけの声になりますが、
これが一番良い音かというとそんなことはありません。
その他の雑音と言えるような音も混ざることにより興味深い音ができます。 - 正弦波(最初のグラフ)だけの楽器を作ることは可能です。
音叉等はその例ですし、時報の音もその一種だと思いますが、
実際の音楽の演奏には用いられていません。
それでは面白くないからです。 - 高い周波数の音が混じった方がきれいに聞こえると思えそうですが、
汚い音を出そうとした方がより高い音が混じるのは興味深い結果でした。
男性の場合中央のラの音が220Hz位で、
五線の上の加線を付けたラの音が440Hz位ですが、
汚い音だとこれ以上、
さらに2000Hzを超えた音も混ざっています。 - とても声量のある人の声には聞こえないくらいの
高い倍音が混ざっているといったことも聞いたことがあるのですが、
聞こえない音は聞こえないので、
どんなに混ざっていても全く関係ありません。
全く聞こえない高さの音をコンサート会場で大音量で流したとしても
誰も気づかずにコンサートは出来るでしょう。
機械で測定して数値として表れるだけだと思います。
オシロスコープで声を分析してみたいとずっと思っていたのですが、
思いもかけず、簡易なものではありますが、実験できました。
倍音が多いほど良い音だという意見は説得力がありますが、
どうも疑わしいと思っていました。
最初の倍音はまだしも、その次の倍音が聞こえすぎると、
ドの音を出してももうそれはソの音なので、変なことになってしまいます。
倍音も含めて音色が出来ますが、多ければ良いとかいうものではないし、
波形もきれいな方が良いというわけでもありません。
つまり波形で良い音なのかどうかなどは分からない。
倍音の分布も音の善し悪しを判断するには難しいということです。
個人的にとても面白い実験でした。
高い音が混ざる方が良い声と考えがちですが、
実際は逆だというのは面白いですね。
またきれいな波形が必ずしも理想の音ではないというのも面白い結果です。
レッスンでは常識にとらわれず、
表現力のある声を目指していきます。
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