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声楽に限らず、声を使う練習で「お腹から声を出しなさい」という表現はとても多いように思います。声帯は喉にしかないし、声は口からしか出ないのに、お腹から声を出すというのは当然間違っています。しかし、「先生お腹から声を出してみてください」とお願いすることもありません。本当にお腹から声を出すというのでは無く、もっとお腹を使う必要があるとを解釈するからです。しかし、どうお腹を使うのか、お腹を使った結果どうなるのかなどはよく分かりません。

良くないレッスンの例です。もっとお腹から声を出しなさいという先生に、生徒はよく分からずお腹に一生懸命力を入れてみる。先生は「違う。もっとお腹を使って」と怒鳴り出す。生徒は大きな声を出さなくてはならないのかと思い、一生懸命大きな声を出してみる。先生は「もっともっと」とさらに怒鳴る。生徒はさらに大きな声になるように頑張る。しばらくしてこれが限界だろうと先生が「そうだ、できるじゃないか。もっと頑張れ」といっておしまい。なんだか残念なレッスンなのですが、生徒が「お腹から声を出す」ことを、大きな声を出すことなんだと解釈し直したことで、なんとか乗り切っています。これが無ければとてもつらいだけの時間になってしまったでしょう。

「お腹から声を出す」というときには横隔膜の中央の収縮が足りないのでもっと強く収縮させるようにといった意味合いで使われることがほとんどです。横隔膜には別の働きもあるので、お腹から声を出すというのがもう一つの働きを指すこともあっても良いのですが、これはほぼありません。とにかく横隔膜の中央に向かっても収縮です。そしてさらに、このことによって、声帯の閉鎖が強くなって初めてこれ練習は成立します。
「お腹から声を出す」は声帯の閉鎖の強い音を要求しているもので、さらに、それを横隔膜の中央の収縮から引き起こされることを意味します。大きめの声を出すためには声帯が強く閉じられる必要がありますが、声帯周辺の筋肉だけでは限界があります。そこに横隔膜の収縮が手伝ってくれると、さらに声帯の閉鎖が強くなるので、それを使おうということです。驚いてビクッとしたときに大きめの声が出てしまうのと同じ原理です。

このメカニズムについては他のところで書いていますので、参考にしてみてください。先ほどのレッスンの例では生徒が大きな声を要求されていると解釈を替えたので、レッスンが成立しています。しかし、横隔膜の収縮は大声の時だけ必要なのでは無く、弱い音でも、声帯の閉鎖と横隔膜の収縮はいつもつながっていなければなりません。この繊細さは「お腹を使って」だけではなかなか難しいことがあるのと、どうしてもこの筋力がまだ弱い人は、弱い中での繊細な喉と横隔膜の連携を見つけたいところですが、筋力がつくまでは何も進まないところに大きな問題があります。
- 結局お腹に力を入れるのは良いのでしょうか、良くないのでしょうか?
- 答えが難しいのですが、お腹に力を入れたら声が変わるようであれば必要な力の可能性が高く、声が全く影響を受けなければ不必要な力になります。後者の全く変化がない場合は明らかに無駄な力ですが、前者の場合は少し難しいです。雑な方言で申し訳ありませんが、心地良い感じでお腹と喉につながりがあれば絶対に正しく、心地良くなければ何かしら問題があると考えた方が良いでしょう。
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