演奏のスタイルは時代と共に変化していきます。
これは様々な要因によります。
例えば楽器の変化、チェンバロがピアノに変わってきたように、
長い音が出せるようになると遅いテンポの設定が可能になります。
楽器の音量が増えてくると、大きなホールが作られるようになり、
それに伴って大編成の曲も作られるし、
少人数で演奏されていた曲も大人数で演奏されていきます。

当然の変化で、このようなことも含めて音楽はどんどん発展してきました。
しかし、新しい方向が出てくるとその方向に行きすぎる性質があります。
表情過多の時代が続くことも良くあります。
何も問題なさそうですが、行き過ぎてしまうわけです。
表情は精神論だけでは演奏につなげられません。
具体的に何かをする必要があります。
例えばより強弱の変化を付ける。
ヴィブラートを多めに付ける。
それでも足りなくなるとテンポを変化させる。
ポルタメントを多用する等など。
程良いととても心地良いのですが、すべて多すぎてしまうと、段々演奏は壊れていきます。
テンポは安定せず、リズムはずれて、音程もはっきりしなくなりハーモニーが分からなくなったり、
とにかく表現しすぎると音楽は壊れていきます。
このように行き過ぎてしまう訳です。

そうするとその後正反対の演奏が主流になっていきます。
安定したテンポを作り、リズムも正確に、音程も正確に、
過度に強弱を付けず、落ち着いた演奏を目指すようになっていきます。
破綻のないきれいな演奏が出来上がりますが、表情に乏しい、
面白みのない演奏になってしまいます。
するとまた逆に表情過多の時代がやってくるわけです。

単純な1例です。
ドイツ語のRの発音は会話では巻き舌はほとんど使われないのに、
歌うときには常に巻き舌で演奏されてきました。
それがあるとき語尾のRは巻き舌を使わないというのが流行になりました。
日常では巻き舌を使わないのに、
歌だけ巻き舌にすると現実とかけ離れたイメージになるために
語尾に関してはアーと発音するようになっていきました。
まずは歌曲で、しかし宗教曲は巻き舌でという時代もありましたが、
そのうちに宗教曲も含めてすべて語尾に関しては
巻き舌は使わない歌い方が主流になっていきました。
日常で使われる発音に近づけると言った考え方は理解できますが、
なぜ語尾だけで、その他のRは巻き舌のままというところに矛盾を感じないでもありません。
今はどうかというと、混在しているようです。
速いパッセージでは巻き舌を使わなかったり、
強調したい言葉では巻き舌を使うといった感じです。
語尾の巻き舌は使わないという事は広まっていた時代に勉強していた人たちが、
今でも「語尾の巻き舌は絶対に使ってはいけない」
を声高に主張しているのは少し滑稽にも感じられます。

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