歌に限らず、声に関して「お腹を使っていない」と指摘されることは多いものです。
こうなるとお腹を使っている状態と
使っていない状態の2つに分かれそうですが、
実はこの考え方は問題を多くはらんでいます。
腹式呼吸をしているとか、していないというのも同じようなものですが、
このように言われると全くお腹を使っていない、
全く腹式呼吸が出来ていない、と考えてしまいます。
0%だと思ってしまいますが、そんなことはありません。
お腹を使うというのがとても曖昧な表現なので、
本来ならばこの言葉の定義が必要になります。
おそらく2つ考えられて、1つは横隔膜を使うこと。
つまり横隔膜が動いているかいないかということ。
もう1つはお腹を使うことで声帯が閉鎖しているかということ。
本来はもう1つ違うことが挙げられますが、
この時に「お腹を使っていない」と言われることはないので、
この2つに絞って考えてみます。
まずは横隔膜が動いているかどうか。
これに関しては全く横隔膜が動いていなければ呼吸が止まってしまいますので、
声を出すという段階の話ではなくなります。
横隔膜を全く使っていない声は存在しません。
次は声帯の閉鎖についてです。
重いものを持ち上げるときにお腹に力が入りますが、
その時に同時に声帯が閉じます。
このようなしくみで声帯の閉鎖が起こりますが、
このしくみが全く起きないくらいにお腹が使われないと、
声帯は閉鎖しません。
息だけの声になります。
つまり全く使っていないか、使われているかの違いではないのですが、
言葉としては使っていないと言われることが多々あります。
この勘違いは結構重要です。
今全く使っていないのだとすれば、
今感じているものとは違う部分を使わなければならなくなります。
使っているのだけれども足りないのだとすればもっとしっかり使うことになります。
「もっとお腹を使って」というのもよく聞きます。
これは先ほどのものとは違って、
0%ではないけれどの例えば30%くらいしか使われていないから、
100%使えるように頑張ろうといったものになります。
ただこれにも問題があって、
こう言われたり、
もしくは自分でお腹をもっと使わなければと思って、
逆に歌いにくくなった経験のある人は少なくないと思います。
結局呼吸の問題大部分は
横隔膜の収縮と声帯の閉鎖のつながりになります。
強さよりも密接に関連性があるかが重要です。
例えば体重を少しかかとよりからつま先よりに移動させると、
お腹に力が入りますが、
その時声帯の閉鎖が少し変化します。
このような変化をしっかりとつかむことの方が
より強い横隔膜を作ることより大切なことです。
極端な場合を想像してみます。
とても強い横隔膜の収縮があり、
その力がすべて声帯の閉鎖に使われたとします。
とても強い閉鎖ですが、
息は声帯の間を通ることが出来ます。
しかし直後にとても強くまた声帯は閉じられますので、
とても大きな声が出ます。
そして声帯自体厚く振動しますので、
声は低い方に引っ張られます。
音程を維持するためにはそれ以上に声帯を引き伸ばしていかなければなりません。
しかし容易ではないので、
常に少し低い喉っぽい声になってしまいます。
強く閉鎖し続けますので、
小さい繊細な声は出せません。
これを避けるために、
お腹にとても強く力を入れているのに、
あえて声帯が強く閉じないように頑張ってしまいます。
こうなると何のためにお腹に力を入れているのか分からなくなります。
お腹に力を入れればよいといった話ではないということでした。
お腹と喉の結びつきで呼吸は考えましょう。
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