久米音楽工房 声楽、発声、ピアノのレッスン 神奈川県川崎市https://liederabend.net/wp声楽、発声(久米聖一)、ピアノ(武田正子)のレッスン 神奈川県川崎市Sun, 21 Apr 2024 13:16:19 +0000jahourly1https://liederabend.net/wp/wp-content/uploads/2020/10/cropped-kumeongaku-1-32x32.png久米音楽工房 声楽、発声、ピアノのレッスン 神奈川県川崎市https://liederabend.net/wp3232 お腹に力を入れる~呼吸法35https://liederabend.net/wp/%e3%81%8a%e8%85%b9%e3%81%ab%e5%8a%9b%e3%82%92%e5%85%a5%e3%82%8c%e3%82%8b%ef%bd%9e%e5%91%bc%e5%90%b8%e6%b3%9535/Sun, 21 Apr 2024 13:16:16 +0000https://liederabend.net/wp/?p=11618

 私がレッスンで良くやるデモンストレーションの一つです。お腹にぐっと力を入れます。やや強めに叩いても痛くないくらいの力です。そして叩きながら生徒さんと会話をします。「今、結構お腹に力を入れていますが、、普通の時と声が全く ... ]]>

 私がレッスンで良くやるデモンストレーションの一つです。お腹にぐっと力を入れます。やや強めに叩いても痛くないくらいの力です。そして叩きながら生徒さんと会話をします。「今、結構お腹に力を入れていますが、、普通の時と声が全く変わりません。つまりこの力は、発声には全く関係の無い力です。」

 実際に試してみてください。腹筋に力を入れても声が影響を受けないことが分かります。そしてお腹から声を出してとか、お腹に力を入れてと言われたときに、真っ先に力を入れるところがこの声が変わらない力だということもよくあります。意味が無いだけでは無く、ある部分を硬直させると必要な呼吸筋の運動が妨げられたり、そうではなくても、体の一部に過度に力を入れてしまうと、他の部分にも力が入って硬直の連鎖が起こります。ですのでどんなにお腹に力を入れて歌いなさいと言われたとしても、声が変わらない部分の力を入れるべきでは無い事を知っている必要があります。

 ではどうお腹に力を入れていけば良いのかということですが、これは簡単です。声が影響を受けるような力の入れ方をすると良いのです。びっくりしたときやつまずいた時に声が出ることがあります。お腹の真ん中が集まるような感じで力が入り,声が出ます。これがお腹に力を入れるときに重要な使い方になります。まずはこのビクッとしたときのお腹の感じ、そしてその時の喉の感じ、さらにはその時の声の感じをつかんで、この3つがひとかたまりになるようなお腹の使い方を見つけていきます。

 このようなものですので、お腹を使って歌うことは決して難しい事ではありません。またとても強く力を入れなければならないわけでもありません。健康に生活できている人が普通に持っている筋肉で大抵のことは出来ます。ただし、大きなホールでオーケストラにも負けない声を出すためにはトレーニングも必要になります。

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鼻声~発声の情報を見分ける7https://liederabend.net/wp/%e9%bc%bb%e5%a3%b0%ef%bd%9e%e7%99%ba%e5%a3%b0%e3%81%ae%e6%83%85%e5%a0%b1%e3%82%92%e8%a6%8b%e5%88%86%e3%81%91%e3%82%8b7/Fri, 12 Apr 2024 08:34:36 +0000https://liederabend.net/wp/?p=11620

 鼻腔共鳴と鼻声を同じように扱っている意見を聞いたので、少し面白いと思い記事にしました。この意見の結論は鼻腔共鳴で歌うべきではなく、口から歌うべきだという意見です。鼻腔共鳴を使うなといっているわけでなかなか斬新です。   ... ]]>

鼻腔共鳴と鼻声

 鼻腔共鳴と鼻声を同じように扱っている意見を聞いたので、少し面白いと思い記事にしました。この意見の結論は鼻腔共鳴で歌うべきではなく、口から歌うべきだという意見です。鼻腔共鳴を使うなといっているわけでなかなか斬新です。

鼻腔共鳴とは

 結論を先に書きますが、鼻腔共鳴は絶対にあります。特に大きな声を出すときにははっきりと共鳴はあって、声をより強くするのに大きな役割を果たしています。共鳴を起こそうとするしないにかかわらず、しゃべる時も、いびきをかいているときも共鳴はします。そしてこれは鼻から息を出すから起こる現象ではありません。音は空気の振動で伝わっていますので、強く遮断をしない限り鼻腔の空間に音は伝わり、反射を繰り返すうちに強く共鳴します。鼻が詰まっていても共鳴します。また鼻から息を出す必要が無いだけではなく、鼻から息を出しながら歌うのは、必要以上に息を出さないといけないので、声門の閉鎖が悪くなり、強さの無い抜けたような音になり、またややガサガサしたような音質の声になります。

2つの勘違い

 先ほどの意見に戻ります。通常鼻声は風邪をひいて鼻が詰まっているときの声を指します。鼻が詰まっていても声に大きな影響はないのですが、MとNの子音が発音できなくなりますので、違和感が強いです。とにかく鼻から全く息が出ない声です。しかし先ほどの鼻腔共鳴と鼻声を同じように扱う意見は逆で、鼻から息を出しながら歌うことを鼻声だと解釈していたようです。鼻声を鼻から息を出しながら声を出すことだという勘違い(実際は正反対です)、そしてさらに鼻腔共鳴は鼻から息が出ることにより起こる現象だという勘違いが重なっての意見です。そうするとこの違和感の強い意見は鼻から息を出しながら歌うものではないということになり、実は正しいことを言おうとしているということになります。

勘違いの理由

 色々と想像できます。例えば鼻腔共鳴が重要だということを聞く。それを鼻から息を出しながらの声だと解釈してしまう。実際に歌ってみるとどうも良くない。鼻腔共鳴を考えずに、普通に口から息が出る声で歌ってみる。こちらの方が良い声になる。結果鼻腔共鳴はさせない方が良いという結論に至る。といった事が考えられます。(想像です)しかし、結論は間違っていません。筋道はおかしいのですが、実際に自分で試して先入観無く判断したために正しいところに行き着いたということだと思います。ただし、これを他の人に伝えてしまうと、文字通り鼻腔共鳴をさせてはいけないと思ってしまうかもしれません。危険なことです。私自身もこのような思い込みの間違いをしていないかは常に考えながらレッスンを進めています。先生の言葉が間違っていることはとても有名な先生であっても起こりえます。先生の意見を大切にしつつ、自分で考えることが大切なのでしょうね。

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良い声の条件~声の診断17https://liederabend.net/wp/%e8%89%af%e3%81%84%e5%a3%b0%e3%81%ae%e6%9d%a1%e4%bb%b6%ef%bd%9e%e5%a3%b0%e3%81%ae%e8%a8%ba%e6%96%ad17/Thu, 04 Apr 2024 14:15:27 +0000https://liederabend.net/wp/?p=11551

 良い声の条件は色々考えられますが、いくつか挙げてみようと思います。  当然のことですが、声帯を閉じることが最も大切なことになります。声帯が閉じていなければ全く声は出ません。何らかの原因で声帯を閉じる筋肉やそれに関する神 ... ]]>

 良い声の条件は色々考えられますが、いくつか挙げてみようと思います。

声門閉鎖

 当然のことですが、声帯を閉じることが最も大切なことになります。声帯が閉じていなければ全く声は出ません。何らかの原因で声帯を閉じる筋肉やそれに関する神経を損傷すると声帯を閉じることが出来なくなることがあります。残念ながらそうすると発声をどんなに頑張っても声を出すことは出来ません。この声門閉鎖は2段階のしくみがあり、一つは声帯の後ろが閉じること。もう一つは声帯筋による閉鎖で、より強い声を作るときに必要な閉鎖です。長くなりますので、詳しいことはまた別の記事で書きます。ただ全く閉鎖が出来ないと声は出ませんので、必要な条件ではありますが、分からないものではありません。

広い音域

 喉を開けると言われているものですが、声帯を引き伸ばす力の調節が上手く機能すると通常1オクターブ半から2オクターブほどの音域の声が出るようになります。これよりも狭い場合は声帯の伸展機能に何か問題があることになります。先ほどの声門閉鎖は問題があると声になりませんので、歌に限らず大きな問題になります。一方声帯の伸展機能は歌の場合に決定的に必要なものになります。音域がある程度広くないと歌える曲が限られてしまいますし、この機能がコントロールできないと音程をキープすることが難しくなります。つまり歌として成立しなくなります。繊細に変化させられると一番良いのですが、まずは音域の広さが問題になります。

クレッシェンドとデクレッシェンド

 声が出ていることと、ある程度の音域があることが前の2つでした。次は音量を変化させられることです。音量の変化は表現のために出来た方が良いと思えますが、それだけでは無く、良い声の条件になります。声は声帯の伸展の具合と声帯の厚さの変化で様々な音程の、様々な音質の、また音量の声を作っていきます。クレッシェンドするためには声帯をだんだん厚くしていく必要がありますがそうすると音程が下がってしまいます。そこで声帯に張力を加えて音程は下がらず、厚くするという調整をしていきます。先ほどの2つと違い今度は2つの違う筋肉をバランス良く変化させなければならないことになります。とても大変なことです。デクレッシェンドでは声帯の厚さを徐々に薄くしていきますが、その時に声帯を引っ張っている力も同時になくなりやすくなります。そうなると音程が下がってしまったり、音が途切れてしまったりします。徐々に力を抜くのは力を入れるよりもずっと難しいものです。

それ以外のこと

 それ以外にも明るい声が良いとか、深い声が良いとか色々な基準が考えられますが、圧倒的にこの3つが大切です。ある程度楽にという条件は付きますが、この3つが網羅できている声は無条件に良い声ですので、他のことにあまり惑わされない方が良いです。先ほどの明るい声と深い声は対立する要素にもなるもので、そうなると明るくて深い声は存在しなくなります。ただ明るい声も深い声も定義があやふやですので、定義の仕方によっては明るくて深い声は存在します。少しややこしい話になりましたが、もう少しこの話を進めると、明るくて深い声があるような明るさや深さは良い声の条件になり得ますが、明るくなると深さが減ったり、深くすると明るさが無くなるような、明るさや深さの声は価値がありません。こだわらない方が良いです。このように明確ではないものはまずは考えない方が良く、単純にこの3つに集中した方が良いです。

確認

 最初の声門閉鎖が出来ないと声が出ませんが、そうでなくとも少し問題があれば、音の立ち上がりや音が消える前に音にならない息だけの状態ができます。この時には最初の声門閉鎖に問題があります。音域はわかりやすいと思います。楽に変化させられるというもの重要な要素です。3つめの音量の変化は難しい事が分かると思います。広い音域で無理なく安定した音質で音量を変化させられるかどうかを確認していきます。

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横隔膜の練習について~呼吸法34https://liederabend.net/wp/%e6%a8%aa%e9%9a%94%e8%86%9c%e3%81%ae%e7%b7%b4%e7%bf%92%e3%81%ab%e3%81%a4%e3%81%84%e3%81%a6%ef%bd%9e%e5%91%bc%e5%90%b8%e6%b3%9534/Fri, 29 Mar 2024 14:07:26 +0000https://liederabend.net/wp/?p=11531

 声は声帯を引き伸ばす力の調節と、声帯の閉鎖の調節ですべて決まります。そして横隔膜は広がろうとする力と中心に向かって集まろうとする力が働きますが、横隔膜が広がることが声帯を引き伸ばすことにつながり、横隔膜の収縮が声帯の閉 ... ]]>

横隔膜の役割

 声は声帯を引き伸ばす力の調節と、声帯の閉鎖の調節ですべて決まります。そして横隔膜は広がろうとする力と中心に向かって集まろうとする力が働きますが、横隔膜が広がることが声帯を引き伸ばすことにつながり、横隔膜の収縮が声帯の閉鎖につながっています。ですので、横隔膜の練習がしっかり出来ればこれだけで声帯の変化に必要な要素をすべて網羅できるようになります。声楽の先生によっては喉の周辺を中心に指導される先生と、呼吸を中心に指導される先生がいらっしゃいますが、どちらも良い歌い手が生まれてきます。偏った練習になりそうなのに上手くいくのはこのようなことからです。

お腹が膨らむように息を吸うことが正しい呼吸法だという考え方をなくそう~呼吸法24

横隔膜の収縮

 今回は横隔膜の収縮についての話です。横隔膜の練習としてはこの収縮を指すことがほとんどです。そしてこの横隔膜はより力強く動く必要があり、鍛えていかなければならないように感じるのではないかと思います。確かにそのような側面もありますが、まず最初に考えるべきところはそこではありません。元気にレッスンにいらっしゃる方は横隔膜が弱すぎて使えないと感じることはほとんどありません。せっかくしっかりとした横隔膜があるのに使いこなせていないと感じることがほとんどです。強さよりも確実に横隔膜を使いこなすことがまず最初に重要なことになります。

横隔膜と喉のつながり

 横隔膜の収縮は声帯の閉鎖に関与しますので、横隔膜に力を入れたらその分声帯が閉じなければならないのですが、この連動を見つけることが最初の課題になります。これは新しく習得しなければならないことでは無く、日常生活で使っているものを自在に使えるように再発見する作業になります。つまずいたときとか、びっくりしたときとか、ガタガタ道を車で走っているときとか横隔膜が揺れると声帯が反応して声門閉鎖が起こり、声が出る事は誰もが体験したことがあると思います。これをいつでも使えるようにするのが最初の目標になります。そう難しい事ではありません。

喉声と横隔膜

 自然現象としては分かっても実際にコントロールしようとすると難しく感じる方も多いかもしれませんが、いつも使っていることですので、繰り返し練習していくと誰でも出来るようになります。ただしこの横隔膜と喉のつながりをあえて弱くしてしまおうとする事も時々起こってしまいます。声楽の経験のある人は喉声をとても嫌います。変な言葉ではありますが、よく使われているのも事実です。喉声は声帯が十分に引き伸ばされていない状態で、強く声帯が閉じた声を指します。この声と、ある程度声帯が引き伸ばされた中で強く声門が閉じられた声の識別がやや分かりにくいので、強く声帯が閉じることを避けようとすることがあります。そうすると横隔膜は声帯を閉じようと頑張っているのに、強く声帯を閉じてはいけないという思いがぶつかって、せっかく横隔膜に力を入れているのに、あまり声帯は閉じてくれないことになり、無駄にお腹に力を入れてしまうようになります。そうなるとお腹に力を入れて声帯が閉じるという反応が分からなくなりますので、お腹に力を入れることだけが残ってしまいます。当然声はあまり変わりませんので、さらにお腹に力を入れなくてはと考えてしまいます。

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直観と論理1~音楽について71https://liederabend.net/wp/%e7%9b%b4%e8%a6%b3%e3%81%a8%e8%ab%96%e7%90%861%ef%bd%9e%e9%9f%b3%e6%a5%bd%e3%81%ab%e3%81%a4%e3%81%84%e3%81%a671/Tue, 19 Mar 2024 15:03:50 +0000https://liederabend.net/wp/?p=11517

 音取りがほぼ出来て、言葉もきれいに入れられるようになった後、さらに良い演奏を目指して頑張っていく事になりますが、なかなか難しいと思うこともあるのではないでしょうか。その時に直観と論理とどちらで進めたら良いかも迷うところ ... ]]>

直感と論理

 音取りがほぼ出来て、言葉もきれいに入れられるようになった後、さらに良い演奏を目指して頑張っていく事になりますが、なかなか難しいと思うこともあるのではないでしょうか。その時に直観と論理とどちらで進めたら良いかも迷うところだと思います。

直感

 例えばもう少し落ち着いた演奏にした方が良いと思ったとします。そこで少しテンポを遅くしてみたり、所々で間を取るようにしたり、少し小さめに演奏したり等試してみるかもしれません。これは直感的に感じたものをきっかけに音楽を作って行く方法です。

論理

 逆に先生からはその音は倚音だからもう少しアクセントを感じてとか、クレッシェンドなのだから少しアチェレランドさせた方が良いとか、論理的な指示が出てきたりします。

私の場合

 私はレッスンの時はほとんどの場合論理的な説明をします。そうなると論理的に演奏法を考えているように思えるでしょうが、実際は逆です。まずは直感的に考えます。ただ直感で感じたものは本当にこれで良いのだろうかとか不安に感じるものです。しかし、楽譜をよく読み取っていくと直感で感じた演奏がふさわしいという理由が色々見つかってきます。そうすると自信を持って演奏することが出来る事になりますし、それをレッスンで要求することも出来ます。論理的な理由付けできない直感はすぐに捨てられます。

無意識に論理性を含んだ直感に

 さらにだんだんとこの論理的な証明は必要なくなっていきます。直感のみで演奏法を見つけていくのですが、その理由を聞かれたら、すべて説明できるように既に論理的になっています。おそらく優れた演奏家はすべて同じような思考回路になっていると思います。例えば音楽のある部分をテンポの揺れの無い確実な安定感で演奏をして、次の部分はテンポの揺れと共にだんだんクレッシェンドをしていく必要があると直感で感じます。その転換点もこの音からというとても明確な一点で分けられます。その後はそれをより確実に演奏できるように練習を繰り返していきます。ここまで論理的な方向の思考は全くないように感じられますが、誰かがなぜそのように演奏したのですかと質問したら、とても明確に、前の部分は和声の変化がゆっくりで、ベースの音は同じ音が続いている。しかし次のシーンでは細かく和音が変化し、ベースも激しく動き出す、さらにメロディーの最高音も徐々に切り上げられているなど、明確な答えが返ってきます。しかし、この論理的な思考は質問が無ければ全く言葉にされなかったものです。直感が明確な理由に基づいていることに確実に自信があるのです。つまりこの時直感は既に論理的に説明できるものになって生まれているのです。

手順

1,直感的にどのように演奏したら良いかを探る。

2,それを試してみて良ければ採用し、良くなければ他の方法を考えてみる。

3,上手くいったらその理由を考えたりすることはしないが、上手くいかなかったら、いろんな手を使ってさらに考えていき、すべての箇所が迷いの無い演奏になるように仕上げていく。

4,通常はここで終わりですが、誰かから質問されたり、本当にそれで良いのか迷ってしまったり、レッスン等で誰かに教えなくてはならないときなどには、言葉にしていきます。

論理的な説明をする理由

 レッスンで論理的に説明をするのには理由があります。同じ曲でも演奏法はいくらでもあります。その時に理由も分からずに先生に言われたとおりに演奏していては、自分の気持ちとは違った演奏を強いられることにもなりますが、理由が分かると、自分とは違う音楽のイメージがあったとしても、先生の音楽を理解して受け入れることが出来るようになります。そしてさらには先生の音楽をしっかり理解して受け入れた後で、自分の発想を加えてさらに先生の音楽を超えた演奏の可能性も出てきます。ということですので、論理的に説明していますが、決して論理的に考えて出てきたものではありません順番は逆です。

高度なレッスン

 さらに進んだレッスンでは、生徒は既に素晴らしい発想で音楽を作り上げて持ってきます。先生はそれを聴いて生徒の発想のすべてを感じ取ります。その上でまだ未完成な部分、つじつまが合わなくなってしまった部分などをクリアできる方法を考え提案していきます。良い先生であればこの時に無理矢理自分が一番良いと思ったもののみを教え込もうとはしません。色々な可能性を既に先生は知っているので、今の生徒が持ってきた演奏に最適な手を加える方法を考えていきます。プロのレッスンのこのようなやりとりはとても面白いものです。

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声を集める1~発声のしくみ68https://liederabend.net/wp/%e5%a3%b0%e3%82%92%e9%9b%86%e3%82%81%e3%82%8b1%ef%bd%9e%e7%99%ba%e5%a3%b0%e3%81%ae%e3%81%97%e3%81%8f%e3%81%bf68/Fri, 15 Mar 2024 09:42:30 +0000https://liederabend.net/wp/?p=11507

 声を集めるとか音を集めると表現されることがあります。イメージはつきやすいと思います。しっかりとしたよく響く声になります。あたりの位置と似ていますが、あたりは必ずしも集める必要はありません。その位置に声を感じるということ ... ]]>

声を集めるとは

 声を集めるとか音を集めると表現されることがあります。イメージはつきやすいと思います。しっかりとしたよく響く声になります。あたりの位置と似ていますが、あたりは必ずしも集める必要はありません。その位置に声を感じるということです。それに対して、集めるというのはあたりの位置にあるだけではなく、より強くあたりの位置に音を感じることになります。

 ではこの時に発声器官はどうなっているかということですが、これは結構わかりやすいと思います。声帯がしっかりと閉じているということです。声帯が強く閉じられると無駄な息漏れがなくなり、力強い声になります。ですので声はより集まった方が良いということではなく、音楽の内容により、しっかり声を集めた方が良いときと、そうではないときがある、集めた方が良いとか集めない方が良いとかの価値観を含んだものではなく、どちらでも出来て必要に合わせて変化させられた方が良いということです。

フースラーのアンザッツ(あたり)の発声での実践~発声のしくみ59

どこに集めるのか

 発声練習では、息漏れが感じられたり、フォルテがでないときに声を集める練習が必要になります。実際の練習では鼻の付け根に声を集めてとか、に声を集めてとか言われることが多いです。に集めることもありますが、どうしても音程が下がってしまったり、ざらついた声になりやすいので、少なくとも基礎の発声練習では使われることはありません。また頭頂に音を感じるととても薄く声帯が引き伸ばされますので、ほとんどその状態で声を集めることは不可能になりますし、それでも集めようとすると、響きは額に感じられますので、最初から額に感じれば良いということになります。

集めることの問題点

 必要な練習ではありますが、問題もあります。発声練習のジレンマでもありますが、声帯をしっかり閉じようとすると喉が開きにくい。つまり声帯を引き伸ばす筋肉の働きが弱くなります。また声帯を引き伸ばす筋肉をしっかり働かせると、強く声を集めることがやりづらくなります。つまり声帯の閉鎖が弱くなります。ですので声を集める練習においてはある程度声帯を引き伸ばしながら、声門をできるだけしっかり閉じる練習が必要になります。

声を集めようとすると無理をした発声になりやすい

 レッスンの中で声を集める要求をしすぎると大抵無理をした発声になります。一時的によく響く声になっても持続できず、持続させようとすると喉が早く疲労したり、気持ちよく歌えなかったりします。どこかに無理が来て、方向転換せざるを得なくなります。自分で練習をしていて、音を集めようと頑張ると一時的に大きな声が出て良さそうだったのに、だんだん苦しくなってきた経験のある人は多いのではないでしょうか?さらにそれでも頑張っていけるくらい喉が強い人は、持続させることが出来、それほど苦しくは無くなりますが、堅さを伴う強い音しか出せなくなり、音量や音色の変化が難しくなったりもします。必要な練習で、簡単そうではありますが、少しやっかいな練習です。

解決策

 声を作る筋肉は色々あり、まずは声帯に近い筋肉(内筋)その外にある筋肉(外喉頭筋)さらに遠くにある筋肉(呼吸筋など)、が組み合わさって出来ていきます。当然声帯に近い筋肉が先に反応するのですが、声帯内筋が積極的に声門閉鎖を主導すると、どうしても声帯は引き伸ばされなくなりますので、横隔膜が主導するような練習が必要になります。横隔膜は主に声帯を閉じる働きをしますので、これが先導して声帯内筋を動かしていくように出来れば、無理をせず声門閉鎖を強くしていくことが出来ます。踏ん張るように横隔膜に力を入れると声が出て、息が止まる反応と同じです。理論的には分かりやすいですが、横隔膜に力を入れると声帯内筋にも過度に力が入り、やはり無理した声にもなりますので、練習はなかなか難しいです。このややこしい課題を実際のレッスンではどのように対処しているかについては、次回書こうと思います。

 

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喉を開けることが空間を広げることだと勘違いしたときの問題点~発声の情報を見分ける6https://liederabend.net/wp/%e5%96%89%e3%82%92%e9%96%8b%e3%81%91%e3%82%8b%e3%81%93%e3%81%a8%e3%81%8c%e7%a9%ba%e9%96%93%e3%82%92%e5%ba%83%e3%81%92%e3%82%8b%e3%81%93%e3%81%a8%e3%81%a0%e3%81%a8%e5%8b%98%e9%81%95%e3%81%84%e3%81%97/Fri, 01 Mar 2024 07:43:43 +0000https://liederabend.net/wp/?p=11494

 発声のレッスンではお腹を使うことと喉を開けることがとても頻繁に指摘されます。その中で喉を開けることに関して、喉を開けると空間が広がり、共鳴が起こり、倍音が増えて、良く響く声になる。といわれることがあります。これは間違っ ... ]]>

喉を開ける

 発声のレッスンではお腹を使うことと喉を開けることがとても頻繁に指摘されます。その中で喉を開けることに関して、喉を開けると空間が広がり、共鳴が起こり、倍音が増えて、良く響く声になる。といわれることがあります。これは間違っているのですが、そうだと信じても良い発声になることもあり、また逆に発声が上手くいかないこともあります。理論的に間違っていても良い結果が出るのであればそれで良いのではないかと思いますが、これが逆に発声を崩してしまうことがありますので、その時には考える必要があります。

喉を開ける~発声の情報を見分ける3

共鳴と倍音

 喉を開けるということは声帯を引き伸ばすことだというのはあちこちで書いていますので、確認していただければと思います。決して空間を広げるのでは無く、声帯の状態です。共鳴は音が壁に当たったときに反射して起こる現象です。壁が音を反射することが必要で、完全に吸音する素材で壁を作ったら、どんなに大きな空間があっても全く共鳴は起こりません。空間があることは必要ですが、大きくすることはそれほど重要ではありません。また倍音は2倍、3倍、4倍・・・の周波数の音程の音が聞こえる現象ですので、倍音がとても強く出てしまうと音程が分からなくなります。

空間を広げようとして上手くいくケース

 空間を広げようとして発声が良くなるケースと逆に悪くなるケースがあります。それぞれで何が起こっているのか考えていきます。まず良くなるケース。空間を広げようとしても外から見えるわけでもないので、確実に広げられるものではありません。そうなると基準になるのは、空間の広がりでは無く、空間が広がった音だとして先生が出しくださる声になります。つまりここで順序が逆になっているのです。空間が広がったので、よく響く声になるはずですが、よく響く声が出たので、空間が広がったのでは無いかと考えるわけです。もちろんこれは勘違いなのですが、一番上手なレッスンの受け方になります。よく響く声を獲得した生徒はこれが空間を広げられた状態なのだと勘違いをすることになりますが、それでもこれを容易に再現することが出来て、そのうちに空間を広げようと考えなくてもきれいに伸ばされた声帯で歌えれば、何の問題も無いので、声楽の長い歴史はこの間違った理論のまま進んできましたし、とても素晴らしい名歌手がたくさん生まれてきました。

空間を広げようとして上手くいかないケース

 さてでは上手くいかないケースを考えてみます。ここでは先ほどの勘違いが起こりません。声がよく響けば良いのでは無く、なんとかして空間を広げようと頑張ったとします。先生の言葉をそのまま信じて何とかしようとします。ここで問題が起こります。空間をできるだけ広げようとすると、声帯は閉じにくくなります。空間を広げたいと一生懸命に頑張っているときに声帯だけしっかり閉じようとするのは感覚的に迷ってしまいます。声帯をしっかり閉じて、声帯より遠いどこかが広がるのは出来そうな気をしますが、声帯に近いどこだか分からない部分を広げながら声帯を閉じるということはほとんど不可能になります。それでも空間を広げる事が課題だとすると、声帯の閉鎖が悪い声になってしまいます。当然響きの悪いざらついた声になるのですが、さらにもっと空間を広げなければならないと思ったら、声のざらつきはもっとひどくなるし、効率の悪い声になりますので、無理して力を入れないとちゃんとした声になりません。どんどん変な発声になってしまいます。

まとめ

 この二つの違いは空間を広げることに固執せずに響きが良くなることに注目したのか、本当に空間を広げることにこだわったかの違いになります。真面目に先生の言葉通りに練習した結果間違ってしまう例です。音楽のレッスンではこの例に限らず文字通り言葉を考えると大きく間違ってしまうことが多々ありますので、変だと思ったら、言葉通りには捉えないことがとても大切になります。さらに本当に正しいのは何かをしっかり考えていくことも大切です。

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ピアノのふた~声楽曲24https://liederabend.net/wp/%e3%83%94%e3%82%a2%e3%83%8e%e3%81%ae%e3%81%b5%e3%81%9f%ef%bd%9e%e5%a3%b0%e6%a5%bd%e6%9b%b224/Fri, 23 Feb 2024 12:38:23 +0000https://liederabend.net/wp/?p=11484

 通常グランドピアノのふたは2~3段階で開けることが出来ます。保管庫に収納している間や移動の時は完全に閉じて、ピアノのコンサートの時は全開にします。声楽のコンサートはオーケストラをバックにということもありますが、一番多い ... ]]>

グランドピアノのふた

 通常グランドピアノのふたは2~3段階で開けることが出来ます。保管庫に収納している間や移動の時は完全に閉じてピアノのコンサートの時は全開にします。声楽のコンサートはオーケストラをバックにということもありますが、一番多いのはピアノと歌のみの編成での演奏です。その時にふたを完全に閉じることはほぼありませんが、少しだけ開けることも全開にすることもあります。場合によっては5cmくらいの積み木を持ってきてほんの少しだけ開けることもあります。

どのくらい開けるのか

 以前はピアノのふたはほんの少ししか開けない方が主流でした。しかし最近はほぼすべてのコンサートで全開にされています。今回はこの変化について書いてみます。

 まずはピアノの音としてはどちらが良いかというと、当然全開の方が良い音になります。ふたを半開にしたピアノのコンサートはありませんが、もしあったとしても渋くて良い演奏だったとはならずに、何か物足りない演奏になると思います。ピアノのふたは堅い材質で出来ており、弦から生まれた音はピアノのふたで反射され、客席に届いていきますが、ふたをほんの少ししか開けないとそれが半減されてしまうことになります。

なぜ昔はふたをほんの少ししか開けなかったのか

 ピアノの音質が悪くなるにもかかわらず以前は少ししかふたを開けなかったのは、歌を目立たせるためです。歌が主役であり、ピアノはそれを陰から支える存在だとしたら、ピアノは良い音ではない方が都合が良い事になります。絵を描くときにメインのものはクリアに書きますが、背景は少しぼかして描かれたりすることと同じ効果です。背景がぼかされることにより、メインのものはより鮮やかに感じられるのです。伴奏をするピアニストにもこのことは要求されます。ピアニストはノーミスで安定して弾けるテクニックがあり、音楽を理解して多彩な表現が出来れば十分なはずですが、伴奏の時は小さい音で弾けることも大切になります。フォルテで弾くのも大変なテクニックですが、ピアノで弾くのも相当なテクニックです。とにかくこの小さな音、歌を邪魔しない音のためにふたはほんの少ししか開けないことが多かったようです。

最近のコンサートでは

 最近のコンサートでピアノのふたを少ししか開けない演奏会はほぼ見当たらなくなりました。この理由は二つあります。

一つは先ほどと正反対のことです。昔はピアノはメインである歌を目立たせるためにできるだけ控えめである必要があったので、ふたも数センチしか開けていませんでしたが、最近は歌とピアノは同じ割合で音楽を作っている。主従関係ではないという風に変わってきたからです。共同で一つの音楽を作り上げるということです。これとともにピアノ伴奏者の地位も上がってきました。これはとても重要なことです。

もう一つはピアノの音はふたを全開にした方が良い音になるということです。音そのものの良さもあるし、表情も多彩に変化させられます。ピアノソロのリサイタルでは必ずふたを全開にするのもこのためです。ピアノの一番左に弱音ペダルがあります。ピアノはすべての音に弦が3本ずつ張られていますが、左のペダルを踏むと鍵盤がスライドして、2本だけ叩くようになります。これがちょうどふたを少ししか開けないときに似た効果があります。ややぼやけた地味な響きになります。ただもちろん歌が聞こえないくらいピアノが強く出てきてしまっては困るので、ピアノ(弱音)で演奏できるテクニックはさらに必要になります。

発表会で

 余談ですが、20年くらい前でしょうか、発表会で二十数人の出演者が歌う演奏会の時、まだその頃は主流では無かったのですが、ピアノのふたを全開にして演奏をしていました。休憩時間に私は出演者や聴きに来てくださったお客様とギリギリまで話をしていて、次の部が始まる直前にまた客席について、次の演奏を聴いていたのですが、何か響きが違う。少しして気付いたのですが、ピアノのふたが閉じられていたのです。後で分かったのですが、お客様の一人がふたを閉じてしまったようです。その当時歌の演奏会でピアノのふたを全開にするのは少数派でした。ふたを閉じてしまった方は歌のコンサートでふたが全開になっている演奏を聴いたことが無いようで、私が歌の演奏会ではピアノのふたは閉じるものだということを知らないか、閉じ忘れだろうと思い、善意でふたを閉じてくださったようです。本来はこのようなときには主催者にひと声かけるべきなのですが、忙しそうにしていたので、ご自身の判断でされたようです。自分の常識を過信してはいけないという一例でした。

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喉声~発声の情報を見分ける5https://liederabend.net/wp/%e5%96%89%e5%a3%b0%ef%bd%9e%e7%99%ba%e5%a3%b0%e3%81%ae%e6%83%85%e5%a0%b1%e3%82%92%e8%a6%8b%e5%88%86%e3%81%91%e3%82%8b5/Fri, 19 Jan 2024 11:15:00 +0000https://liederabend.net/wp/?p=11054

 「喉声」とか「喉で歌っている」という表現があります。両方とも良くない声とされるものですが、この言葉が正しくないことはすぐに分かります。喉が声帯を表しているとしたら、声帯以外で作られる声は無いので、全く意味の無い表現です ... ]]>

喉声とは

 「喉声」とか「喉で歌っている」という表現があります。両方とも良くない声とされるものですが、この言葉が正しくないことはすぐに分かります。喉が声帯を表しているとしたら、声帯以外で作られる声は無いので、全く意味の無い表現です。文字通り受け取って喉では無い声を作ろうとしても出来るわけがありません。無視してしまっても良いのですが、少し考えてみます。

喉声の解決方法

 このように表現されるときの声には2つの共通した問題を指摘しているように思えます。1声帯の伸展が弱い声、2力が入りすぎている声。これ以外の要因で喉声などと言われることは無いようです。2に関しては話が長くなりますので、また別の機会に書こうと思います。ただ1に関してクリアできれば、絶対に喉声と言われることはありませんので、これに集中します。喉声の特徴は音程が下がりやすく、伸びのない響きであり、濁った声です。すべてが十分に声帯が引き伸ばされずに、声帯の振動が歪(いびつ)になったときに起こる現象です。声帯が十分に引き伸ばされていればどんなに力を入れてもこのような振動にはなりません。

声帯を強く閉めること

 ピアノをどんなに強く弾いても喉声に相当するような濁った音にはなりません。これは力強く弦を引っ張っているためです。この力が弱いと強く鍵盤を叩いてしまうと濁った音になります。fが出ない楽器になってしまいます。発声で喉を開けることをしつこく要求されるのはこのことに因ります。大編成のオーケストラが全員でフォルテを出し、さらに大勢の合唱が全力で歌っているときに、ソリストの声がそれを抜けて聞こえるためには相当に強く声帯が閉じられる必要がありますが、それでもきれいに聞こえるのはそれ以上に声帯が十分に引き伸ばされているからです。喉声と言われたときに、声帯の閉鎖を弱くすると解消されますが、正しい解決策は別のところにあります。

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横隔膜の働き~発声の情報を見分ける4https://liederabend.net/wp/daiaphram-info/Sun, 14 Jan 2024 08:28:15 +0000https://liederabend.net/wp/?p=11019

 お腹を使って歌うとか、お腹から声を出すという表現もたくさん見かけます。この時のお腹は横隔膜を指していると考えられます。これ自体には問題はありませんが、通常考えられるお腹と横隔膜には少し位置の違いがあります。お腹に手のひ ... ]]>

横隔膜

 お腹を使って歌うとか、お腹から声を出すという表現もたくさん見かけます。この時のお腹は横隔膜を指していると考えられます。これ自体には問題はありませんが、通常考えられるお腹と横隔膜には少し位置の違いがあります。お腹に手のひらを当てたときに親指に当たる部分が横隔膜です。お腹から考えると、随分上にあります。ここで迷う人は少ないと思いますが、文字通りお腹と受け取ってしまうと間違ってしまいます。

横隔膜の使い方

 次に横隔膜をどのように使っていくのかが問題になります。これには横隔膜を収縮させるというのと横隔膜を広げるという正反対の表現が使われます。前回喉を開ける事に関して、声帯を閉じて開けることは出来ないということを書きましたが、今回はどうでしょうか。横隔膜を収縮させて広げることは出来るでしょうか

 答えは出来るです。逆に収縮か広げるかのどちらかしか出来ないとしたら、収縮しきったところで、または限界まで広げたところで、この運動はストップしてしまいます。しかし、両方が同時に起こると永遠に続けることが出来るようになります。ただ、横隔膜を広げながら収縮させて歌うとしてもなんだか分からないことになってしまいます。収縮と開くという違う運動があるのだから、それぞれは違う目的があるはずです。

お腹が膨らむように息を吸うことが正しい呼吸法だという考え方をなくそう~呼吸法24

横隔膜の収縮

 まずは収縮から。これはわかりやすいと思います。重いものを持ち上げるときに誰でもお腹の中心に集まるような力を感じます。これが収縮で、力を入れて何かをしようとしたら、横隔膜は収縮をします。そしてその時に声帯が閉じる感覚、または声が出る感覚も分かると思います。つまり横隔膜の収縮は声帯の閉鎖に関与しています。ですので、横隔膜をしっかりと収縮させると大きな声が出るわけです。しかし、これが働きすぎると、声帯は厚ぼったくなってしまい、音程が下がりやすくなるし、喉っぽい声になってしまいます。

横隔膜を広げる

 次に横隔膜が広がることについて書いていきます。これは少しわかりにくいかもしれませんが、喉を開ける、つまり声帯を引き伸ばすことに関与しています。喉を開けることが自覚できる人は喉を開けたときに横隔膜付近が広がるのを感じられると思います。また喉を開ける練習であくびの喉にすると言われることもありますが、この時にも横隔膜周辺は広がっていくことが分かると思います。

まとめ

 声帯の閉鎖と伸展のバランスで、音程や音量音色のコントロールをして声を作るのですが、この二つに横隔膜の収縮と広げることが関与しているので、発声のシステムは極めてシンプルです。横隔膜の練習は喉との関係のみに集中した方が良いし、指導者がお腹の使い方が良いとか悪いとか判断するのは、すべて出てきた声との関連性のみを考えています。声帯と無関係な横隔膜の練習は無意味だということです。

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喉を開ける~発声の情報を見分ける3https://liederabend.net/wp/throatinfomation/Fri, 05 Jan 2024 04:17:10 +0000https://liederabend.net/wp/?p=10989

 「喉を開ける」とか逆に「喉が締まっている」というのも良く聞きます。まずはこの言葉の違和感を感じる必要があります。喉を開けるのは良いことで、喉が締まっているのは良くないということですが、とても不思議な言葉です。喉が何を指 ... ]]>

喉を開けるとは

 「喉を開ける」とか逆に「喉が締まっている」というのも良く聞きます。まずはこの言葉の違和感を感じる必要があります。喉を開けるのは良いことで、喉が締まっているのは良くないということですが、とても不思議な言葉です。喉が何を指すのかにもよりますが、まずは声帯を考えるべきだと思います。そうなると声帯が開いた状態と閉じた状態ということになりますが、音が出るためには声帯は閉じる必要があります。名歌手であっても事故や病気で声帯を閉じる筋肉が動かなくなってしまったら、歌うことが出来なくなるばかりか、いっさい声は出なくなります。喉が締まらないということは声が出ないということになります。この言葉を文字通り受け取ってはいけないことが分かります。

喉を開けることが空間を広げることだと勘違いしたときの問題点~発声の情報を見分ける6

本当の意味

 そうするとこの「喉」が声帯ではないものを表していると考えざるを得ませんが、声帯は閉じてそれではない喉を開けるのは何をしたら良いのかが分かりません。この言葉の真意はこれだけ考えても分かりません。一旦この言葉は忘れて、発声のしくみ、特に声帯の働きを調べてみます。声帯はとても器用に開閉しますし、閉鎖の強さも変えられます。しかしこれだけでは自在に音程を変えることは出来ません。声帯を引っ張って薄くするしくみが必要になります。この閉鎖と薄くするしくみがバランスを変えてコントロールできれば、音程も音量も自在に変化させることが出来ます。声帯を強く閉鎖させると重い大きな声になりますが、その結果音程が下がったり、雑音が混ざる声になってしまいます。そこで声帯を引き伸ばすと、音程も上がり、声帯の振動もクリアになっていきます。これらのバランスを変えていくことで様々な声を作れるようになります。こうなると想像できると思いますが、声帯を閉じる働きではなく、声帯を薄く引き伸ばす働きが「喉を開ける」という表現になったということです。喉が締まっていると言われる声は高い音が出しづらかったり、下がりやすくなってしまいます。このことも声帯を引き伸ばす力が不足していることと一致します。「喉を開ける」が声帯を引き伸ばすことだと分かると、しっかりと声帯を閉じながら、「喉を開ける」ができるようになります。喉を閉じて(声帯をしっかりとくっつけて)喉を開ける(声帯を薄く引き伸ばす)ということが可能になります。

結論

 喉が締まっているというのは声帯の閉鎖ではなく、声帯の伸展筋不足という意味なのですが、この言葉からは想像できません。この言葉が正しく発声を表現していると思い込んでしまうと、難しい事になってしまいます。この言葉をそのまま受け取ってしまう声帯を開くということが発声できない状態につながってしまうことを考えると、言葉が間違っていることに気付くと思います。そうすると別の意味があるか無視した方が良いかということになります。とりあえず言葉が間違って使われているのですが、あまりにも普及してしまっているので、自分で翻訳して使う必要があります。

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腹式呼吸~発声の情報を見分ける2https://liederabend.net/wp/abdominal-breathing-information/Fri, 29 Dec 2023 14:38:14 +0000https://liederabend.net/wp/?p=10976

 声楽といえばまずは腹式呼吸が出来なければというイメージをお持ちの方が多いように思います。今回はこれについて考えてみます。まず腹式呼吸とは何かということが分からなくてはなりません。これは簡単で、肺に息が入ってくると肺は膨 ... ]]>

腹式呼吸とは

 声楽といえばまずは腹式呼吸が出来なければというイメージをお持ちの方が多いように思います。今回はこれについて考えてみます。まず腹式呼吸とは何かということが分からなくてはなりません。これは簡単で、肺に息が入ってくると肺は膨らみます。その時に胸が膨らむと胸式呼吸、お腹が膨らむと腹式呼吸と名付けています。また、医学用語のようにも見えますが、呼吸のトラブルのある患者さんに対して胸式呼吸になってしまいましたとか、腹式呼吸になっているので大丈夫とか言われることは無いように、医学用語ではありません

 ここで二つのことを考えたいと思います。歌うということは息の吐き方がより重要なはずなのに、吸い方にのみ名前があること。そして肺はお腹だけ膨らむとか、胸だけ膨らむということはないので、呼吸は腹式呼吸と胸式呼吸が共に行われ、どちらかを全く使わないということはあり得ないということ。

お腹が膨らむように息を吸うことが正しい呼吸法だという考え方をなくそう~呼吸法24

正しい腹式呼吸を考えてみる

 こうなると私は腹式呼吸という用語には固執すべきではないと思ってしまうのですが、ただたくさんのところで歌を歌うには腹式呼吸は大事なものだと言われると、どうしても気になってしまうものです。そうなると正しいはずの(?)腹式呼吸をマスターするために、どのような腹式呼吸にすべきかを考えることになります。お腹が膨れるように息を吸うのがこの用語の意味なので、それは外せません。しかし、肝心の息の吐き方はこの用語は教えてくれていません。そこで想像するしかないのですが、お腹が膨れるように吸うのであれば吐くときはお腹がしぼむように吐くと良いかもしれない、そうすると次にまたお腹が膨らむように吸うことが出来、呼吸として完成します。お腹に風船があって、それが膨らんだりしぼんだりしながら歌うということです。理論としては成立しますが、実際に歌ってみると息の多い時と少ない時とで声が変わってしまうし、息っぽい音になってしまうし、あまり良いことがなさそうです。そうすると次には息を吸ってお腹を膨らますのは一緒で、息を吐くときにお腹がしぼまないようにすると良いかもしれないという考えが出てきます。しかしこれは不自然でとてもやりづらい。息が入ってくるからお腹が膨らむのであり、息を吐いてもお腹がしぼまなければ、次はお腹が膨らむように息を吸うことが出来なくなります。膨らんでしまったお腹がまた膨らむように息を吸うことは出来ないので、腹式呼吸の意味がなくなってしまいます。

歌にとって必要な呼吸

 このようなことで、発声が分からなくなってしまった経験のある方はとても多いのではないかと思います。それでも腹式呼吸は大切だと聞くことが多いと、正しい腹式呼吸とは何なのだろうと考えてしまうと思いますが、息を吸ったときにお腹が膨らむというだけの用語にそれ以上の意味を求めても無駄です。どんなに偉い先生から言われたとしても、少なくとも自分にとって意味があるものに見えない間は考えても仕方がありません。「歌うことにとって呼吸は重要な意味を持ちますが、それは腹式呼吸で表されるものではない」というのが真理だと思います。では歌にとって最も大切な呼吸とはということになりますが、これは簡単です。長く一定に吐き続けられる呼吸です。そしてこれは腹式呼吸という言葉からは全く想像できないものです。そしてこの時にお腹の筋肉はしっかりと使われますが、息を吸ったら膨らむお腹とは結びつくものではありません。

結論

 発声の色々な情報を考えるための記事を色々と書いてみようと思います。発声のみならず、常識に惑わされずに自分で考えることの大切さを書いていきます。私たちは残念ながら、学校で何が正しいかをたくさん学んできましたが、自分で考えることはあまり教えてもらえませんでした。正しいのは何かということよりも、自分で考える方がもっと大切なのではないかと思います。それは間違っているかもしれないという不安を常に孕んではいますが、自分で考えてたどり着いた結論なので、新しい情報が入ってきたり、考え違いをしていたことに気付いたら、すぐに修正をすることが可能になります。正しいのはこれだと習ったものは、その理由が分からないので、修正が効かなくなります。このような思い込みは正義を振りかざして容易に人を傷つける原因にもなります。現代に生きる私たちにとても大切な力なのではないでしょうか。

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発声の情報を見分けるhttps://liederabend.net/wp/imformation/Fri, 29 Dec 2023 14:37:55 +0000https://liederabend.net/wp/?p=10962

 私の音楽経験は管楽器の演奏から始まりました。吹奏楽部に入り、ユーフォニアムを演奏していたのですが、これは吹奏楽に詳しい人でないと知らない人も多いと思います。そのような楽器でしたので、中高生の時にはプロのユーフォニアム奏 ... ]]>

 私の音楽経験は管楽器の演奏から始まりました。吹奏楽部に入り、ユーフォニアムを演奏していたのですが、これは吹奏楽に詳しい人でないと知らない人も多いと思います。そのような楽器でしたので、中高生の時にはプロのユーフォニアム奏者の演奏を生で聴いた経験は一度もありませんでした。さらにレコードも全くなく、本当のユーフォニアムの音はどんなものだろうといつも考えていました。さて今はどうかというと、生の演奏は特に地方の人などは接することはあまりないかもしれませんが、CDも出ているし、YouTubeでもたくさん聞くことが出来ます。とてもうらやましいことです。情報がなくて困るということがだんだん少なくなってきたように思います。しかし今度は別の問題が出てきます。たくさんの情報の中で、何が正しいのかとか、自分には何が必要なのかとか、どのように扱ったら良いのかなど、多すぎる雑多な情報の整理が次の問題として出てきます。昔に比べれば贅沢な問題ですが、それでも音楽に限らず、現代ではこれらの情報をどのように考えていくのかが大きな課題になっています。

 さて発声に関しても今はたくさんの情報をあちこちで手に入れることが出来ます。本もたくさんあるし、私のサイトのようにネットにもたくさんの情報があります。このたくさんの情報をどう整理するのかが大きな課題です。ここ数年のコロナに関してたくさんの情報が飛び交っていました。そこでよく言われたことにエビデンス(証拠)があります。そしてエビデンスとして考えられるものは、専門家の意見、公的機関の発表等がありましたが、しかしそれらにはずれがあり、果たして何が正しいのか色々な論争がなされていました。もっと時間がたったときにその答え合わせが出来るのだと思いますが、未だに分からないことがたくさんあります。そしてエビデンスとなるものとして、その分野で有名な機関や専門家ということになることが多いので、誰がより専門的なのかということになってしまって、その一つ一つの事象に目が行かなくなってしまうことに違和感を感じていました。

 ここでは誰の意見なのかということは全く考えずに、発声で正しいとされていること、間違っているとされていることなどをどのように考えていけば良いかを書いていこうと思います。今ある情報の中で、考えられることを理由とともに書いていこうと思っていますが、私が書いたことも間違っているかもしれないという不安は常にあります。しかしその考え方や過程を明記することで、違う情報が見つかったときに変更できる材料になるはずです。呼吸法、あたり、共鳴、脱力などなど今までも書いているものを、その考え方を中心にもう一度書いていこうと思います。

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詩と詞について~声楽曲23https://liederabend.net/wp/about-poem/Thu, 21 Dec 2023 11:14:27 +0000https://liederabend.net/wp/?p=10955

 歌の歌詞を指す言葉に「詩」と「詞」の二つの漢字があります。通常詩人が詩を書いて詩集として、また雑誌等に掲載する場合の詩は常に「詩」です。作詞家が曲になることを前提に書くと「詞」になります。同じ発音で漢字だけが違うのです ... ]]>

「詩」「詞」について

 歌の歌詞を指す言葉に「詩」と「詞」の二つの漢字があります。通常詩人が詩を書いて詩集として、また雑誌等に掲載する場合の詩は常に「詩」です。作詞家が曲になることを前提に書くと「詞」になります。同じ発音で漢字だけが違うのですが、とても興味深いことです。日本語以外に似たような違いのある言語は聞いたことがありません。もし他にもあるようでしたら、教えて頂けると助かります。

詩人は曲を付けられることを望んではいない

 作詞家が「詞」を書く場合は「詞」単独で発表されることを前提としていません。場合によっては作曲家と一緒に考えて、一部を書き換えたり、長くしたり、短くしたり等の変更も考えられます。つまり歌が出来るまで共同作業をしていくことになります。さてでは詩人が「詩」を書く場合はどうでしょうか?「詩」は曲がつくことを前提としていません。当然作曲家から一部を変更してほしいと言われることもないし、追加や削除もしません。とにかく「詩」作品としてそれのみで完成することを前提としています。これは詩人が自作の詩に曲を付けられることも必ずしも歓迎していないことを示します。例えばゲーテは自身の詩に曲を付けること自体を嫌がっていたわけではありませんでしたが、民謡のような簡単な有節歌曲以上のものは歓迎しなかったようです。これは十分に理解できます。「詩」はそれ自体で完結していて、それ以外のもので邪魔されたくなかったわけです。曲がつくことによってより世界が広がったとか、より深くなったとなれば、詩としては完成されていなかったということですからね。

詩の解釈について

 歌曲の場合ほとんど「詩」に曲が付けられるのですが、詩人が考えたものと作曲家が考えたものはズレが出てきます。どれだけ深く読み込んでも別の人の視点で見るわけですので、仕方がないことです。これは重要なことで、偉大な作曲家が詩を正しく解釈できていないなど考えられないと思うところもあるかと思いますが、そのようなものではありませんし、常に正しい一つの解釈にたどり着くものばかりだとしたら、詩の深みは薄れてしまうでしょう。一度読んだ詩を数年後に読み直したときに新しい発見があったり、以前とは違うものに感じられることなど良くあることだと思います。そういうものです。そしてそれを演奏するときに演奏者の感覚が混ざります。そうなるとさらに複雑になります。詩を読んだときに感じるもの、曲を通して感じるもの、実際に声にしたときに感じるものなど、それぞれで違ったものを感じることもあります。絶対的に正しい一つの答えがほしくなるところですが、そんなことは不可能です。その時に一番正しいと思ったものを演奏につなげていく事しかできません。それでいいのではないかと思います。そしてまた同じ曲を再び演奏する機会があれば、違う結論になることもあるはずですので、堂々と昔とは違う演奏をすれば良いと思います。

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音の高さの名前~音楽について70https://liederabend.net/wp/name-tone/Sun, 03 Dec 2023 13:44:33 +0000https://liederabend.net/wp/?p=10935

 音の高さはドレミファソラシドで表すのが一番多いですが、これと合わせて全部で4種類を知っていると便利です。今回はとても基本的な楽典の話です。残りの3つは日本語とドイツ語、英語の読み方です。 ドレミファソラシドと同じ順番で ... ]]>

 音の高さはドレミファソラシドで表すのが一番多いですが、これと合わせて全部で4種類を知っていると便利です。今回はとても基本的な楽典の話です。残りの3つは日本語とドイツ語、英語の読み方です。

ドレミファソラシドと同じ順番でのそれぞれです。

日本語 ハニホヘトイロ

ドイツ語 CDEFGAH

英語 CDEFGAB

 音の名前の総称に音名と階名があります。音名は通常の音の高さを表すもので、階名は移動ドの時に用いられます。例えばト長調の場合は音名でソの高さをドに読み替える読み方です。そしてこの読み替えは必ずドレミファソラシドのみで行われます。つまりその他の日本語、ドイツ語、英語は移動ドではない音名のみに使われます。理由は分かりませんが、世界的にそのように使われますので、ドレミの場合は音名の可能性も階名の可能性もあり、その他は必ず音名を表すことになります。

 イロハはもちろん日本でしか使われません。それも調性を表すときにしか使いませんので、ハ長調とかト長調とかの使われ方のみで、今のハの音は少し低かったなどと言われることはありません。わざわざイロハを使わず、C長調、G長調でも良かったのではないかと思いますが、通例使われていますので、ドがハで、ソがトだと分かる必要があります。調の話の時だけの記号です。またレ♯は嬰ニ、レ♭は変ニのように、シャープは嬰(えい)、フラットは変(へん)を付けて表します。

 残りはドイツ語と英語です。クラッシックでは圧倒的にドイツ語がよく使われ、ポピュラー音楽では英語がよく使われます。英語の方がわかりやすいのでまずは英語から。ドがCになりそのままDEFGまでいき、ラの音でA、シをBにします。ラからABCDEFGと考えても良いです。発音もそのままシー、ディー、イー、エフ、ジー、エイ、ビーだし♯♭がついてもD♯ディーシャープ、D♭ディーフラットと読みますので、慣れれば簡単だと思います。調性もそのまま長調を表すmajorメジャー、minorマイナーを付けてCmajorシーメジャー、Cminorシーマイナーと発音します。クラッシックでも英語でのリハーサルの場合は英語の音名が使われることも多いです。

 最後に一番ややこしいドイツ語です。まず英語と同じように、CDEFGAまでいきますが、シの音だけBではなく、Hが使われます。そしてBはシ♭を表します。書き言葉の場合はBだけだとどちらを表しているのか分からないので困りますが、実際に発音するとドイツ語のアルファベットの読みになりますので、発音では違いが分かります。Cツェー、Dデー、Eエー、Fエフ、Gゲー、Aアー、Hハー、そしてBべーと発音します。つまりBをベーと発音するとドイツ語で、シ♭を表し、ビーと発音すると英語になり、シを表します。またさらにシャープ、フラットを付けたときの読み方が独特です。シャープの場合はisフラットの場合はesを付けます。ド♯はCis、ド♭はCesといった感じです。まとめます。

ド♯Cisツィス、ド♭Cesツェス、

レ♯Disディス、レ♭Desデエス、

ミ♯Eisエイス、ミ♭Esエス、

ファ♯Fisフィス、ファ♭Fesフェス、

ソ♯Gisギス、ソ♭Gesゲス、

ラ♯Aisアイス、ラ♭Asアス、

シ♯Hisヒス、シ♭Bべー

少しややこしいですが、例えばクラリネットは少し長い楽器はA管、それより少し短いとB管、さらに短いとEs管といったように、いくつかの楽器があります。A管はドの音を出すとラの音が出ます。B管の場合はシ♭、Es管場合はミ♭の音になります。こうなるとドの音といったときに何を表すか分からなくなりますので、3小節目のFの音にもう少しアクセントを付けてというように音名が便利になります。このようなことから、器楽の演奏をしている人は早くにドイツ音名を勉強することが多いですが、歌の場合は大抵ドレミで済んでしまいますので、ドイツ音名が苦手な人も多いようです。ただ大切なことなので、一度しっかり勉強できると良いです。

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自分に合う曲、合わない曲~声楽曲22https://liederabend.net/wp/fit-songs/Sun, 03 Dec 2023 04:08:22 +0000https://liederabend.net/wp/?p=10908

 自分に合う曲はどんな曲だろうかと考えたり、果たして今練習している曲は自分に合っているのだろうかと考えることはよくあるのではないでしょうか?また先生からこの曲はあなたに合っているから練習してみなさい。また逆にこの曲はあな ... ]]>

 自分に合う曲はどんな曲だろうかと考えたり、果たして今練習している曲は自分に合っているのだろうかと考えることはよくあるのではないでしょうか?また先生からこの曲はあなたに合っているから練習してみなさい。また逆にこの曲はあなたには合わないから止めておきなさいと言われることもあります。今回はこのことについて考えてみます。

 まず少し極端な例から見てみます。例えばメゾソプラノの人が、ソプラノのアリアを歌いたいとか、バリトンの人がテノールのアリアを歌いたいとか思うことは有り得ると思いますが、そのままではどうしても出せない、もしくは苦しくなってしまう音が出てきます。合わないから止めておきなさいと言われる例です。似たような例で、やっとで高いA(ラ)が出せるようになったテノールが、ハイC(その上のドの音)の出てくるアリアを歌いたいと思う場合ももう少し待った方が良いとなります。

 少し違う例を出してみます。今度はすべての音が歌える音域に入っている場合です。まだ喉が弱いのだけれども長かったり、フォルテで歌うシーンが多い曲を歌いたい場合。軽い声なのに重さが要求される曲を歌いたい場合。このような場合にもあなたには合わないとか、まだ合わないといった表現をされます。

 基本的に全曲通して歌うことが出来ないとか、歌うことで声帯に無理がかかり、喉を壊しかねないときに合わないといわれることになります。気持ちは分かりますが、先生としては喉を守るためにストップをかける責任があります。ドクターストップのようなものです。

 では逆に重い声質の人が軽い曲を歌う場合はどうでしょうか?この場合は喉に無理があるということはありませんが、それでも合わないと言われてしまうことがあります。これは喉を守るためではなく、この曲では試験やコンクールで良い点がつかないという意味になります。似たような例では、レガートがきれいに歌えない場合には、速めの曲でフレーズが短いものにしたり、逆に速いパッセージが上手くいかなければ遅い曲だけにしたりということも考えられます。これらのケースでは果たしてそれで良いのだろうかという疑問が出てきます。直近の試験では良い点数になるかもしれませんが、レパートリーが広がらないことになってしまいます。

 ここで2つの違った例が出てきました。一つは喉に無理がかかるドクターストップのようなケース。もう一つは試験等でよりよい点数を出すための選択です。この2つは明確に区別をした方が良いです。特に後者の場合は直近の試験等では点数の出る曲を選んだとしても、合わないとされる曲も練習すべきです。そして重い声なのに軽い声も使えるようになったり、速い曲も遅い曲も歌えるようになったりすることで、表現の可能性は格段に広がります。レッスンではあなたにこの曲は合わないからこっちに変えなさいと言われて終わってしまうところですが、しっかり自分で区別をして、必要な練習は自分で進めていく事が大切です。

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息の色と発声について(腹圧)~呼吸法33https://liederabend.net/wp/breath-color/Wed, 25 Oct 2023 10:15:59 +0000https://liederabend.net/wp/?p=10855

 発声にとって息の流れは欠かせないものですが、息に圧力をかけるとかスピードのある息の流れを作るとかは必要ありません。良い発声のための息はできるだけ少しずつ、安定して長く吐くこと、そしてそれが苦しくないことにつきます。息は ... ]]>

 発声にとって息の流れは欠かせないものですが、息に圧力をかけるとかスピードのある息の流れを作るとかは必要ありません。良い発声のための息はできるだけ少しずつ、安定して長く吐くこと、そしてそれが苦しくないことにつきます。息は声帯を振動させる原動力ですので、長く吐くことが難しかったり、不安定な流れは良くありません。しかしそれだけです。

 シンプルなことなのですが、それでも息に声帯の開閉をさせる以上に音質に関する何かの役割があると思ってしまうことが多いようです。吐いた息がそのまま音になると考えてしまうようですが、最初の音になるのは元々声帯の近くにあった空気で、さらにその振動はすぐに秒速340mのスピードで周りの空気に伝わっていきます。発声の息と声帯の関係はヴァイオリンの弓と弦の関係に似ています。弓は弦を振動させるのに重要ですが、弦が振動したら、弦の近くの空気が振動し、秒速340mで広がっていきます。弓が一緒に少し振動するでしょうが、弓で音を伝えているわけではありません。

 ですので、緊張感のある声や大きな声を出すために腹圧をかけて息に圧力を加える必要などないのです。腹圧をかけることは簡単にできますので、実験が出来ます。汚い話で申し訳ありませんが、排便や嘔吐が上手くいかないときにお腹に力を入れることは経験があると思います。その時にうめくような声になりますが、腹圧をかけたとしても全然良い声にならないことが分かります。

 ではなぜ腹圧が必要だという考えが出てくるのかを考えてみます。まずは横隔膜が発声に大きな役割を持っていることから始まります。これは実際に横隔膜の練習が進んでいくと、大きな声が出るし、高い声が出る、また表情もついてくるので、疑いがないところです。ここまでは良いのですが、横隔膜が息に圧力を加えるからこのような効果があるというところに間違いがあります。この間違いは先ほどの実験で実証できます。腹圧をかけても声は良くなりません。そうすると次の疑問が出てきます。では声にとって横隔膜は何をしているのかということです。

 横隔膜は肺の下部にあって、息を吸うと下がり、吐くときに上がっていきます。横隔膜は声を出すときには上がっていくのですが、通常とても素早く上がってしまいがちです。この運動は歌を歌うには不向きです。長く息を吐くことが出来ないからです。ですので、横隔膜が素早く上がってしまわないように頑張る必要があります。当然下向きの力です。この力が横隔膜を使おうとするときの最初のとても大切な力です。これにより息は少しずつ安定して長く吐くことが可能になるわけですが、それと同時に起こる反応があります。声帯の閉鎖です。なぜこれがセットで起こるのかは分かりませんが、人間の体はそのように出来ています。このおかげで赤ちゃんは生まれたすぐに大きな声で泣くことが出来ます。何か工夫したり考えたりせずにそうなっています。

 厳密には横隔膜がすぐに上がってこないようにするだけでは声帯の閉鎖は強くなりません。横隔膜の中央が収縮してお腹の真ん中に集まるような力が働くことによって、声帯の閉鎖が強くなります。この横隔膜の緊張が腹圧と考えられたのは容易に想像できますが、間違っています。さらに、腹圧ではなく吐く息にに圧力を加えると考えてみます。そうすると肺の容積を少なくする必要がありますので、息の出口である口または声帯をしっかりと閉じて、胸をできるだけ小さくして横隔膜も上げると最大限に息に圧力をかけられますが、このことが良い声を作るのと正反対だということは容易に分かります。

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第23回Lindenbaum演奏会2023https://liederabend.net/wp/lindenbaum2023/Fri, 06 Oct 2023 02:30:03 +0000https://liederabend.net/wp/?p=10840

 久米聖一門下会の声楽演奏会を2023年11月5日(日)に溝の口の糀ホールで開催いたします。新型コロナの感染者数が気になるところではありますが、今回は制限を設けずに、お聴きいただけるようにしました。入場無料ですので、お気 ... ]]>

 久米聖一門下会の声楽演奏会を2023年11月5日(日)に溝の口の糀ホールで開催いたします。新型コロナの感染者数が気になるところではありますが、今回は制限を設けずに、お聴きいただけるようにしました。入場無料ですので、お気軽にお立ち寄りください。

 出演者一同皆様と音楽を共に味わえる時間を楽しみにしています。

 チラシは下記よりダウンロードできます。

 第23回Lindenbaum演奏会

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舌が堅くなることについて~声の診断16https://liederabend.net/wp/hard-tongue/Wed, 30 Aug 2023 03:44:43 +0000https://liederabend.net/wp/?p=10709

 良くない発声の状態として、舌が堅くなる、あごに力が入る、舌が奥に引っ込む、喉頭が上がる等言われることがありますが、これらはすべて同じ状況を指します。そしてこれらのトラブルを抱えている人はある程度の音域がしっかりと歌える ... ]]>

舌やあごが硬くなる

 良くない発声の状態として、舌が堅くなる、あごに力が入る、舌が奥に引っ込む、喉頭が上がる等言われることがありますが、これらはすべて同じ状況を指します。そしてこれらのトラブルを抱えている人はある程度の音域がしっかりと歌えるし、音量も結構あります。窮屈な音ではありますが、ちゃんと歌えるということです。これは大切なことで、舌が堅いと感じたり、指摘されたりすると、自分の発声は全然良くないと思いやすいですが、頑張って練習してきた証拠でもあるということです。

 先ほどあごや舌についていくつかの事象を、すべて同じ状況だと書きました。舌が堅くなると、奥に引き込まれやすいし、あごが硬く感じるし、喉頭も少し上がってきます。例えば舌を前に出して舌先に力を入れることは可能です。これは今回のトラブルとは全く関係ないし、トラブルでもなんでもないので、そのように歌っている人は一度も見たことがありません。

舌が堅くなるしくみ

 ここで舌が堅くなるメカニズムを説明します。まずは下の図を見てください。

図1
図2 

 図1はのど仏、喉頭です。上部の大きな骨が甲状軟骨。下部のやや小さい骨が輪状軟骨です。甲状軟骨のやや下の方にまっすぐ横に引かれた線が声帯です。声帯は図1の黒い線の状態から赤い線の状態に変化することによって引き伸ばされます。喉が開いたと言われる状態です。この時に図2の赤い筋肉(輪状甲状筋)が収縮します。声楽のみならず色々な声を使う人たちが度々言われる喉を開けなさいということ指摘はすべてこの運動に問題があるからです。

図3

 図3は図1の喉頭の周辺の筋肉について書いたものです。喉を開く=声帯を伸ばすことです。しかし甲状軟骨という骨の中に声帯がある以上真横に声帯を伸ばすことは不可能なので、甲状軟骨が下向きに回転することが不可欠なのですが、その時に図2の輪状甲状筋がしっかり働いてくれれば何の問題もありません。しかし、それが上手くいかないときに次の手段が始まります。図3の喉頭の上部から舌の付け根に続いている甲状舌骨筋が甲状軟骨を押し下げる動きです。これでも甲状軟骨は下に傾きますので、声帯は伸ばされます。これが舌に力が入っていると言われている状況です。これでも問題なさそうですが、音が窮屈に感じられたり、伸びの無い声になってしまったり、場合によってはフォルテは出せてもピアノにしづらいなどといった問題が出てきます。そこでこれらは解決しなければならない問題になっていきます。

力を抜くことが解決策ではない

 通常舌に力が入っているを感じたら、なんとか力を抜かなければと思うところだと思いますが、このメカニズムが分かっていたら力を抜くことが解決策ではないことが分かります。舌の力を本当に抜いたら、今まで甲状舌骨筋によって甲状軟骨を押し下げて声帯を引き伸ばしていたのに、この力を抜くと高い音は出なくなってしまいます。解決策は簡単で、本来の輪状甲状筋をしっかり使って甲状軟骨を傾かせる練習をするということです。そして輪状甲状筋が正しく動いたら、わざわざ無理して甲状舌骨筋が押し下げることはしなくなります。

まとめ

  1. 舌に力が入るのは頑張って練習した結果
  2. 喉を開けるために声帯を傾かせる必要があるのを舌骨筋が押し下げることによって起こる現象
  3. 声帯を傾かせるために本来の輪状甲状筋を使う練習をすること

 と言うことですので、舌に力が入っているなどの指摘は役に立ちません。言われたとしても無視して、正しく喉を開ける練習をすることをおすすめします。舌の力を抜いても解決はしません。舌の力を抜いたら上手くいったと思っている人も、何らかの形で輪状甲状筋がしっかり動くようになったのと舌の力を抜こうと思った時期が重なっただけです。また、きれいに発声が出来ている人が舌の状態を考えながら歌っていることはありません。完全に無視されます。と言うことで舌の力を抜こうと思ってもあまり良い結果にはならないだろうという話でした。ちなみに舌骨筋が甲状軟骨を過度に押し下げていると舌を前に出して発声できなくなります。発声練習の時に下唇より前に舌を出しても普通に声を出せるか試してみてください。上手くいかなければ、舌骨筋に頼りすぎているかもしれません。ちなみに舌骨筋は喉頭を下げるために働くのではなく、輪状甲状筋や胸骨甲状筋により甲状軟骨の引き下げに対して、逆に引き上げる筋肉として働く方が良い発声になります。舌骨筋も必要な筋肉です。

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発声が良くなると倍音が増えると思われる理由~常識を疑う20https://liederabend.net/wp/overtone/Sat, 26 Aug 2023 13:58:34 +0000https://liederabend.net/wp/?p=10702

 倍音とは元になる音の2倍、3倍、4倍・・・の周波数の音が聞こえる現象を指します。実際の音ではドの音を出したら、最初の倍音は1オクターブ高いドの音、次はその上のソの音、次は元の音の2オクターブ上のドの音・・・結構高い音で ... ]]>

倍音とは

 倍音とは元になる音の2倍、3倍、4倍・・・の周波数の音が聞こえる現象を指します。実際の音ではドの音を出したら、最初の倍音は1オクターブ高いドの音、次はその上のソの音、次は元の音の2オクターブ上のドの音・・・結構高い音です。さて、実際の声はこの元の音(基音)と倍音だけで構成されているわけではなく、色々な周波数の音が混ざります。そしてこの色々な周波数の音が少ないと澄んだ音、しかし表情の少ない音に感じられるし、元の音が分からないくらいにその他の周波数が多く聞こえる声は音程が分からないような汚い声と言われる声になります。

 良い声とされる声は基音と倍音のみから出来る声ではなく、またその他の周波数の音(雑音)がたくさん混ざった音でも無く、ほど良く雑音が混ざった音ということになります。数値的に良い声はこうだと規定できないところが音の面白いところかもしれません。AIブームではありますが、人が作り出す以上に素晴らしい声をAIが作り出すことは容易ではないだろうと思われる証拠の一つだと思います。

倍音が多く出たとしたら

 さて倍音の話に戻ります。倍音が多ければ良い音だとしたら、1オクターブ高い音を歌と同時に流したら良い声になりそうですが、そんなことはありません。例えばピアノの音が声の1オクターブ上を重ねていることはよくありますが、やや響きを厚くしてくれますが特段素晴らしい音色になったとは感じません。さらに次の倍音は完全5度上の音ですので、ハ長調でシの音を出したとすると、ファ♯の音がしっかり聞こえることになります。属和音のシーンだとしたら、ソとファが同時に演奏されることが多いですので、そこにファ♯が混ざると邪魔にしかなりません。しかし実際は邪魔になりません。その理由は簡単で、倍音は基音に比べてごく小さな音しか出ていないからです。もし、基音に匹敵するくらい大きな倍音が出るとしたら、邪魔になってしまいます。倍音が多ければ良いということはないのです。

倍音が聞こえるのは倍音が増えたのではないことについて

 倍音が増えるわけではなくても先ほど書いた雑音が少なくなると倍音が聞こえやすくなるというのは確かです。つまり倍音できれいな音ができるのではなく、倍音に気付くくらい雑音の少ない音だということになります。波形がきれいな正弦波になると雑音はとても少なくなります。音叉のような音です。声ではファルセットが一番これに近い音になります。しかし最初に書いたように本当に良い声は雑音が全くない音ではなく、ほど良く雑音が混ざった音ですので、倍音は良い声の基準には全くならないということです。ただ、ファルセットが正弦波に近いということは声門閉鎖が弱いときにこのような音になりますので、弱音の時、または静かに消えていくような声の場合は倍音に気付くような声はふさわしい声ということになります。しかしもっと感情あふれる演奏の時に倍音がたくさん聞こえる声はふさわしくないということです。

高い音が混ざった声

 ちなみにファルセットと普通の声、汚い声を比較したときに一番高い音が混ざるのは汚い声を出したときです。高い音が混ざると良い声になりそうですが、全く逆になるのも面白いところです。

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